室町時代から宮中や院に仕える女性たちが使い始めたのが女房言葉だ。今では多くの家庭で使われている言葉も少なくない。「おでん」や「しゃもじ」は、その代表だろう。赤ちゃんの「おむつ」も女房言葉に由来することを最近、知った。
インターネットで検索すると、赤ちゃんを包む 「むつき」には、「大」「小」の二つがあった。「大きいむつき」で赤子の体全体をくるみ、排便を始末するため、股間にあてた「小さいむつき」は「お湿(しめ)し」とも呼ばれた。その後、体全体をくるむ習慣はなくなり、「おむつ」という言葉だけが残り、「おしめ」と混同されて使われるようになったという。
厚労省は今年1月、自治体に対し、使用済みおむつの処分を施設でするように推奨する通知を出した。併せて、保管用のごみ箱購入費用への補助制度があることも周知した。排泄物を長時間保管し、その後、保護者が持ち運ぶことが、衛生面からも問題になっており、園内での処分を望む声が出ていたそうだ。「保護者の持ち帰り」としてきた自治体は通知を受け、対応を急いでいる。
おむつは持ち帰れば家庭ごみだが、園内で処分すると事業ごみになる。処分費用を賄うには、新たな予算措置が必要になるため、「保護者に負担を求めることも含めて検討したい」という自治体もあると聞く。
「使って捨てる」紙おむつは、布オムツよりお金がかかる。石油から作られているので、肌にもやさしいとは言えないが、手軽なことは間違いない。「施設内で処分」の新聞記事を読みながら、保育士になんでもお任せの風潮がさらに強まるのではないか、との思いもチラリと頭をよぎった。(時)
縁談をまとめるために使う言葉を仲人口という。定番は「気立てが良くて、美人」かもしれない。美人はともかく、気立ての「気」は、日常生活のさまざまな場面に使われるようだ。最近はとかく荒ぶる「気」を持つ人が多いせいか、血なまぐさい事件報道も相次ぐ。外国の収容所から強盗や殺人を指示していたとされる「ルフィ」グループの存在が明るみに出た。
ルフィ事件は報道番組を乗っ取った感があるが、テレビや交流サイト(SNS)では、若気の至りとも言える「事件」も騒ぎとなった。大手回転ずしチェーン「スシロー」の岐阜市内の店舗で、金髪の高校生が卓上のしょうゆ差しの注ぎ口をなめるなどする迷惑行為を捉えた動画が拡散した。岐阜県警は偽計業務妨害の疑いで捜査しており、交流サイト(SNS)上で最初に動画を拡散させた知人とみられる関係者も書類送検する方針という。
スシローは迷惑行為を受け、当該店舗のすべてのしょうゆボトルの入れ替えと、湯飲みの洗浄を余儀なくされた。動画拡散後、株価は160億円以上も下落した。高校生が通っていた高校にはクレームが相次ぎ、高校生は自主退学したそうだ。普段は黒髪なのに、「冬休みの間だけはじけたい」と両親の許可をもらって、金髪にしていたとされるが、老年の身には、「はじけたいから金髪」の気持ちは分からない。
同様ないたずら行為は、各地の飲食店で発覚している。悪ふざけという範囲を逸脱した「若気の至り」で許されるのは何歳なのだろうか。学生時代と思う人もいるかもしれないが、それでは高卒と大卒では、年齢が違うことになる。10代の頃の失敗こそが若気の至りだと考える人も多いかもしれない。
くだんの高校生はSNSの「いいね」を欲するがために、余波を考えずにSNSにアップしたのだろう。相次ぐ事件を耳にすると、相手や周囲、社会の「気」が分からない人が増えていることだけは間違いない。(時)
小説家で、映画監督の村上龍の代表作の一つに「13歳のハローワーク」(幻冬舎)がある。仕事について考えるきっかけになると思われたのか、ベストセラーとなった。500を超える職業が紹介されている。
詐欺師や泥棒は正式な「仕事」ではない。高齢男性の遺産目当てに結婚する「後妻業」も同様だろう。後妻業は小説のタイトルにもなり、映画にもなった。2007年から2013年にかけ、京都府、大阪府、兵庫県の3府県で、高齢男性3人が青酸化合物によって殺害された事件もあった。死刑判決を受けた女性は、言葉巧みに男性に近づいたに違いない。
政治の世界で批判の的になっている旧統一教会と接点があったと指摘された市議会議員の釈明文書が自宅のポストに投函されていた。文書によると、議員の議会報告者を読み、感銘を受けたという女性から電話があり、教会の関連団体の役員と面会した。議員の活動を褒めたうえで、団体の催しの出席と「平和大使」の就任を依頼された。平和大使は断ったが、大会の出席は懇願され、やむなく了承したそうだ。その後、安倍元総理の銃撃事件があり、先の女性から「迷惑がかかっているのではないか」という電話があり、初めて教会の関連団体と説明されたという。
四年に一回、選挙を抱える議員は、「会いたい」と言われれば、「一票」と考えて、安易に接触しがちだ。くだんの市議も「慎重に接しなければならない」と反省していた。
オレオレ詐欺や原野商法、結婚詐欺をみても、言葉巧みに接してくる輩は少なくない。このところのニュースは、闇バイト強盗事件でもちきりだが、コメンテーターが「宅配業者が来ても、すぐに玄関のドアを開けてはいけない」と強調している。そんな時代の風潮が何とも情けない。(時)
保育園によって違いがあるが、保育園の主任保育士はおおむね20年以上のキャリアを持つそうだ。園長、副園長に次ぐ、現場のリーダーと言える。各クラスの担任保育士から学年主任保育士を経て、園全体の主任保育士となるのが一般的という。
主任保育士専門研修会が1月20日に開かれた。福岡市私立保育士会と共催で、講師は松尾宗明・佐賀大医学部教授。「保育所における感染症対策」の演題で、新型コロナウイルス感染対策にも言及した。研修会後の懇談で、保育施設も医療機関も濃厚接触者が複数出た場合、休みの職員を出勤させるなどして、不足する人員を補ってきたという「苦労話」になった。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類について、政府は5月8日に現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる方針を固めた。国内のコロナ感染確認から3年を経て、社会経済活動の大幅な緩和されることになった。現在、感染者に原則として7日間の療養、濃厚接触者に5日間の待機が求められているが、5類になれば、法に基づく療養や待機がなくなるそうだ。
研修会で、松尾教授はノロウイルス嘔吐物の処理の仕方、アルコール消毒液の使用法も説明したが、何とも手間のかかかる面倒な仕事と分かった。実際の現場では、保育士のご苦労はいかばかりだろう。発熱、下痢などの症状があっても、共働きの保護者はすぐには駆けつけられないと聞く。5類の変更が職員の負担軽減につながるのだろうか。多忙な保育士の業務が、少しでも緩和されるのなら喜ばしい。(時)
福岡市・JR博多駅前の路上で、元交際相手の女性を刺殺した疑いで、31歳の男が逮捕された。男はフードをかぶって、伊達メガネ、マスク姿だったが、「見当たり捜査」の警察官が発見したという。
見当たり捜査は、顔写真や外見の特徴を記憶、雑踏の中から見つけ出す捜査手法。1978年、大阪府警で初めて導入され、全国に広がった。刑事ドラマや小説の題材にもなっている。監視カメラやAI(人工知能)が登場したことで、古典的な手法の感も否めないが、今回の事件では、ヒトの目が変装を見破ったわけだ。「監視カメラは人を見つけ出す能力は高いかもしれないが、すぐに逮捕状を執行することはできない」と話す捜査員もいる。
1月19日付けの読売新聞で、神奈川県藤沢市の認可保育所が23台の防犯カメラを園内に設置していることを紹介していた。保育士の目が届かないところで起きた、けがやけんかの原因究明にも生かせるようにと、次第に数を増やしていったそうだ。園長は「子どもがけがをしたときに客観的な事実を確認でき、保護者への説明や改善に生かせる。虐待の抑止にもなると思う」と話していた。監視カメラの設置は、園児への虐待や不適切保育が全国で相次いでいることも背景にあるのだろうが、保育士の勤務ぶりをチェックしているようにも見える。
お隣の中国では、2億台を超える監視カメラが稼働していると聞く。「天網恢恢(かいかい)疎にして漏らさず」という成句に由来する監視システム「天網」で、信号無視やパジャマでの外出などの軽犯罪をした国民の氏名や顔写真などの個人情報がさらされるケースもあるそうだ。インターネットでの書き込みも監視されているが、「交通事故が減り、治安は大幅に改善された」と多くの国民が歓迎しているという。
治安の改善はその通りだろう。日本でも監視カメラが、「活躍」する幼稚園や保育園が増えていくのだろうか。(時)