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未来の小窓(192) 無縁墓

 自宅近くの低い山を歩いていて、小石に躓(つまづ)いた。大きくよろけたものの、幸いにも転倒は避けられた。転ばずに済んだことに、ほっとするとともに、「躓く石も縁の端」という諺が思い浮かんだ。石に躓くというようなちょっとしたことも前世からの約束事なのだろうか。
 「因縁」や「縁がある」という言葉は、今でもよく使われる。人と人との結びつきを古くから大切にしてきたのは、稲作中心の農業社会だったことと無関係ではあるまい。標高の高い水田から順番に水を引いて、集落総出で田植えをした。稲刈りも互いに助け合わなければできなかった。
 人間関係が希薄になっているためだろうか。公営の霊園や墓地を持つ自治体が墓を引き継ぐ子どもや親族がいない「無縁墓」の扱いに苦慮しているそうだ。読売新聞が1月29日付けの紙面で報じていた。墓地埋葬法では、縁故者がいないことを確認する手続きを取れば、合葬墓に遺骨を移せるが、墓石については明確な規定がないことも、記事で知った。2010年に放送されたNHKドキュメンタリー番組で、地縁や血縁のない「無縁社会」という造語が初めて登場した。番組では、遺骨の引き取り手がない「無縁死」が取り上げられていた記憶がある。一人暮らしをしている高齢者が、死後数か月経って発見され、身元不明のまま地方自治体の担当者が葬儀を進めるケースが少なくないとあった。
 未婚もまま、年を重ねたり、熟年離婚をしたりする人は増え続けている。2040年の平均寿命は男性83・2歳、女性89・6歳と予測されており、単身高齢者は増加する一方だ。配偶者に先立たれた後も、長い人生を生きていかなければいけないケースも増える。
 どうやら、無縁社会の正体は「孤独」らしい。政府も2021年、孤独・孤立対策担当室を設置した。個人の問題ではなく、社会全体の問題として対応していかざるを得ない。(時)

未来の小窓(191) しっぺ返し

 新車の販売には、ちょっとした「悪知恵」が必要らしい。まず、インターホンを押した家の車のナンバーをチェック。車検が近くなったころを見計らい、車の外装を調べ、運転席を窓越しに見て、走行距離を確認する。頼まれてもいないのに、新車を購入した際の見積もりを勝手に作成し、再訪問するそうだ。稲泉連氏の著書「僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由」に、この「勝手な査定」になじめない車の営業マンが登場する。営業不振で辞めた先輩もいることにも触れている。
 言うまでもなく、売り上げがなければ、企業は存続できない。ひと昔前のように、一人ひとりの売り上げのグラフを掲示している会社は今でもあるのだろうか。部長や課長が、大声で発破をかけている姿を想像できるのは、筆者が古い世代なのかもしれない。
 利益至上主義の結果だろうか。中古車販売大手「ビッグモーター」は車を故意に傷つけ、損保ジャパンを始めとする損保会社に修理代金の水増し請求を繰り返していた。枯れ葉を掃除するのが面倒臭いからか、店舗前の街路樹の薬剤で枯死までさせていたことには驚かされた。この問題で、金融庁の行政処分を受けた、SOMPOホールディングス(HD)は、桜田謙悟会長兼最高経営責任者(CEO)(67)が3月31日付で退任するそうだ。桜田氏は14年近くグループを率い、5億円近い報酬を受け取っていたという。
 自動車の認証試験を巡る不正をしていたダイハツ工業は、量産に必要な国の「型式指定」取り消しという事態に発展した。背景には、経営幹部が短期間での開発が求めた風土があると報じられている。利益だけを目標にすると、いつかしっぺ返しが待っていることが分かる。(時)

未来の小窓(190) 道を尋ねる

 粗忽者が登場する代表的な落語の一つが「堀の内」だ。そそっかしい性格を直そうと、堀の内の御祖師さまに願掛けに行く亭主が登場する。道に迷って、通りすがりの人に尋ねていく姿が描かれるが、スマートフォンで、目的地までの道順や、電車の時間を調べることがすっかり当り前になった時代では、違和感があるかもしれない。
 街中では、画面を見つめながら、歩いている若者も目立つ。画面上に道順を示したり、声で案内したりできる機種もあるようだ。これだけ便利な時代になると、待ち合わせ場所が分からず、行き違いになって困るカップルもいないだろう。JRの駅の改札口付近にあった伝言板を目にしていた世代としては、隔世の感が拭えない。
 そのためか、道順を教えることを難しく感じる人もいるようだ。最近、道順を聞いたところ、「近くなので一緒に行きましょう」というケースが相次いだ。親切にしてくれたことに文句を言う筋合いは全くないのだが、「突き当たり」「2筋目」といった言葉を耳にすることはなくなったような気がする。
 AI(人工知能)が将棋や囲碁だけでなく、いろいろな分野に浸透している。俳句を詠んだり、脚本や音楽も作成できたりするという。日本語を英語や中国語などに自動翻訳してくれる時代になり、人と人が向き合っての会話がいよいよ少なくなるのではないか。同じ部屋にいるのに、メールで連絡する部下がいると嘆く上司の愚痴を聞いたことがある。
言うまでもなく、対面でのコミュニケーションメリットは、相手との信頼関係が築きやすいことだろう。ちょっとした表情の変化は、メールの文章や画面越しでは気づけない。お金や時間を効果的に使う「コスパ」や「タイパ」だけを基準にすることはできない。(時)

未来の小窓(189) チャンスの女神

 「幸運の女神」と言えば、第一勧業銀行が扱う宝くじのイベントに華を添える若い女性が思い浮かぶ。七福神の紅一点、弁才天は水と豊穣を象徴し、財を与えてくれる福の神として信仰されている。幸運をもたらしてくれるのは、女神のイメージがあるのだが、もとになった神様は、ギリシャ神話に登場する男の神様、カイロスらしい。
 カイロスは前髪が長く、前から行くと、捕まえやすいが、後頭部はハゲており、過ぎ去ってからでは髪をつかめない。絵画や彫刻でも、前髪は長いが、後頭部がハゲている美少年として、表現されているが、「幸運の女神は前髪しかない」という言葉を聞くのはどうしてだろうか。
 書籍のタイトルに興味を覚え、「チャンスはハゲおやじー久留島武彦の心を育てる名言集」(梓書院)を手に取った。久留島(1874~1960)は大分県玖珠町出身の童話作家。日本のアンデルセンと呼ばれ、日本のボーイスカウト運動の基礎作りにも参画した。明治から昭和にかけ、多くの童話を発表したほか、全国を回り、読み聞かせ活動にも力を入れた。故郷の玖珠町は「童話の里」として知られる。
 「名言集」では、久留島の人生訓が紹介されている。デンマークで、アンデルセンの復権運動をしたり、話し言葉による童話を発表したりしただけに、「好機はすぐに捉えなければ、後から捉えることはできない」ことを強調している。
チャンスを逃さないためには、フットワーク軽く、常に動けるようにしておくことが大切なのは言うまでない。先送りしたり、遠慮しすぎたり、準備が不足したりしては、チャンスが掴めない。どんな問題でも「よく論議し、適切な対応をしたい」と言うどこかの首相に読み聞かせたい。(時)

未来の小窓(188) 縁起

 仏教用語の「因縁生起」を略され、縁起となった。仏教の中心思想の一つで、あらゆる事象は、さまざまな原因や縁によって起きると説くようだ。物事の起こり、起源の意味もあり、建立の由来を記した社寺の「絵巻物」のなかには、国宝に指定されたものもある。
 縁起をやたらと気にする「験担ぎ」の人もいる。落語の「かつぎや」に登場する呉服屋の旦那もその一人だろう。元旦そうそう「仏頂面をしていては縁起が良くない」「二日の掃き初めが済まないうちに箒に触るのはゲンが悪い」などと、奉公人を説教して回る姿が描かれる。
 一粒の籾が万倍にも実るという「一粒万倍日」と天が万物の罪を赦す「天赦日」が重なった、縁起の良い日が今年の1月1日だったが、石川県・能登半島で大地震が起きた。マグニチュード(M)7・6。志賀町では、震度7の激しい揺れに見舞われた。ビルの倒壊や火災が相次ぎ、沿岸部には津波も押し寄せた。日を追って、犠牲者の数も増え続けており、行方不明者を合わせると300人を超えると報じられている。
 翌2日には、379人を乗せ、東京・羽田空港に着陸した日本航空の旅客機が海上保安庁所属の航空機と衝突した。機体が炎上する様子がテレビ中継され、見入った人も多かっただろう。3日には、北九州市の食堂街が大火に見舞われた。何とも多事多難な年明けとなった。
 縁起が悪いのを祝い直すのが験直しだが、どうやら 「うまくいく」 「運気が上がる」と信じ込むことも大切らしい。医療の世界でも、実際には効果のない偽物の薬を飲んだにも関わらず、症状の改善する「プラシーボ効果」はよく知られている。落語の「かつぎや」でも調子の良い宝船売りが、呉服屋を七福神に見立てる。「旦那が大黒柱で大黒様、お嬢さまはお美しいので弁天さま」と言い、「お店が呉服(五福)屋さんですから」と続けるのが「落ち」になっている。
 インターネットを検索すると、「一粒万倍日」は年間約60日もあるそうだ。次の機会に験直しするしかない。(時)
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