日本の語源は「日の本」といれる。七世紀の大化の改新のころ、中国との交流のなかで、太陽が昇る東方の国として使われた。当初は「やまと」と読んだようだが、奈良時代以降、「にほん」「にっぽん」と音読みするようになったという。
調べてみると、国名の世来はさまざまだ。「スタン」がつく国は、ペルシャ語の文化の影響を受けており、スタンには「~が多い場所」「~の土地」の意味があるそうだ。カザフスタンは、カザフ族が多い場所、ウズベキスタンはウズベク人が多い場所となる。アフリカの「カメルーン」を最初に「発見」したのはポルトガル人で、湾内の大量のエビを見て、「リオ・ダス・カマロネス(エビの川)」驚いたことに由来する。
アフリカ北東部・スーダンは、アラビア語の「黒い人」に由来するそうだ。ふたつの軍事組織が銃撃戦や空爆を繰り広げ、すでに400人を超える市民が亡くなっている。戦闘の激化で、各国は対応に追われており、日本人も大使館職員ら52人が退避を終え、希望者は4月29日朝、チャーター機で羽田空港に到着した。
帰国した日本人のなかには、現地で医療活動や国の基盤づくりを手伝っているNPO法人「ロシナンテス」(北九州市)のメンバーも含まれている。「富士山を見て涙がこぼれそうだった。いろいろな方々のご尽力に感謝したい」と話す法人理事長の川原尚行さんは北九州市・小倉高を経て、九州大医学部を卒業している。
ふたつの軍事組織の主張は知る由もないが、各国の支援者を追い出してしまうような衝突はいかがなものか。スーダンから脱出のニュースをも見ながら、国民の安全が何よりも優先すること改めて痛感する。(時)
東大生が難しいクイズに挑戦するテレビ番組が人気を集めている。先日の番組で、東大医学部の女性が、泡銭(あぶく銭)を「ほうせん」と読んでいた。優秀な成績で高校を卒業したであろう女性は、競馬やパチンコで、思わぬお金を手にしたことがないのかもしれない。泡のように消えてしまう金とは、縁遠い人生なのだろう。
教科書や参考書には、一般的に悪事や悪業は取り上げられない。多分、妻や情婦が、ほかの男を誘惑し、それをネタに相手の男から金品をゆすり取る、美人局(つつもたせ)も登場しない。歌舞伎で有名な台詞と言えば、「銭と違って 金包み こいつぁ春から 縁起がいいわえ」だが、金包みは、夜鷹を川に突き落とし、奪った100両だ。時代小説や落語でも一般的な言葉も、入試問題としては出題しにくいだろう。
最難関とされる東大には、世帯年収が高い家庭出身の学生が多い。日本の平均世帯年収は500万円台、中央値は400万円台だが、東大学生委員会が2021年実施した学生生活実態調査によると、「東大生の世帯年収」が1050万円以上と答えた学生は4割を超える。 専業主婦の家庭が多く、父親は医師や大企業の幹部だったりすると聞く。小学生の頃から習い事をして、 私立中高に通いながら、複数の塾に行っていた学生も少なくないのだろう。
経済的に恵まれた家庭で生れたことが喜ばしいことだが、人生の<負の側面>を知らないままに育っているのではないか。受験のためだけの勉強をしてきた若者もいるかもしれない。最終学歴で、その後の人生は決まってしまう傾向は薄まっているが、今なお、官界や経済界のリーダーに東大生は少なくない。だからこそ、ともすれば悪行に走ってしまわざるを得ない人々にも、今少し関心を持ってほしい。(時)
日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」とともに、年末の風物詩と言えば、「ユーキャン新語・流行語大賞」だろう。1984年に始まり、原則として、毎年12月1日に発表される。昭和から平成に移り変わった1989年にノミネートされたのが、栄養ドリンク・リゲインのCM、「24時間戦えますか」だ。猛烈に働くことが良し、とされた時代だったことがうかがえる。
その後、バブルが崩壊し、今では、働き方改革が叫ばれる時代になった。ブラック企業という言葉も生まれている。リゲインを生み出したメーカーも医薬部外品としての錠剤を販売している。人生100年時代を応援するアイテムとして売っていく、と強調しているようだ。
4月1日から従業員1000人を超える企業に、男性の育休取得率の公表が義務付けられた。対象企業は年1回、ホームページなどで男性育休率の数値を公表する。ほかにも、時間外労働の制限、転勤についての配慮なども、企業に求められているが、現場では、どこまで実行されるのだろうか。
厚生労働省の最近の調査によると、過去5年間、職場で育休制度などを使おうとした男性500人の4分の1が、育休をめぐって、嫌がらせなどの被害経験があった。嫌がらせの相手は「上司」が3分の2を占め、半分近くが育休の取得をあきらめていた。男性の育児参加を支援する団体にも、「育休を取ると言ったら左遷された」「『出世しなくていいの』と言われた」などの声が寄せられている。
上司に当たる50代はがむしゃらに働いてきた世代かもしれない。自分たちと同じ働き方を求めがちだが、時代が変わってきたことを認識するのはなかなか難しい。(時)
江戸時代の福岡藩には「鶏卵仕組」という役所があった。鶏卵は常温でも保存できることから、江戸や大坂に出荷していた。筑前卵と呼ばれたという。一般社団法人「藤香会」が、初代藩主の黒田長政公が没後400年を迎えるのに合わせ、作成した歴史書「筑前福岡藩の歴史」(非売品)で知った。ちなみに、藤香会の前身は報古会。福岡繁栄の礎を築いた歴代藩主の功績を讃えるため、明治24年(1891 )に創設されている。
歴史書によると、当時、養鶏が盛んだったのは、宗像、古賀、糟屋地域。卵を産まなくなった鶏は、食用に回された。今も、水炊きや筑前煮が、福岡を代表する郷土料理となっている所以という。
民間調査機関・帝国データバンクの調査では、外食大手の約3割が卵を使ったメニューの提供を休止したり、休止を表明したりしたと、新聞で報じられていた。言うまでもなく、ロシアによるウクライナ侵略に伴う混乱に端を発した、鶏卵の供給不足や価格高騰の影響だ。鶏卵の生産コストの半分はトウモロコシなどの飼料費が占めており、9割近くを輸入に頼っていることから、これからも上昇は避けられない。親子どんぶりや天津飯など、おなじみの料理に使われてきた「物価の優等生」の異変と言えるかもしれない。
卵の値上がりは、世界的な傾向らしい。欧米では「卵」と「物価上昇」の英語を組み合わせた「エッグフレーション」という言葉も生まれていると聞く。読売新聞の「よみうり時事川柳」でも「玉子焼き初めて時価と書く大将(東京 鈴江淡白)」とあった。
鶏卵だけでなく、多くの「ものの値段」が上昇している。コロナ禍は何とか収束に兆しを見せてはいるが、何となく将来の不安感が拭えないのは、この物価上昇も一因なのかもしれない。(時)
就職試験の面接で、よくある質問の一つが「あなたの尊敬する人はだれですか」だろう。最近、胸を張って「父」「母」と答える学生が増えているという。父親より母親の方が多いらしい。尊敬する理由として、「家族のためにこつこつ働いてくれた」「子どものために自分を犠牲にしてくれた」などを挙げるそうだ。両親を尊敬しても良いのだが、どことなく違和感を覚える。家計を支え、食事を作り、大学の学費を負担し、できる限りの愛情を注いでくれたことは分かるが、家庭の問題であり、どうして「尊敬する人」につながるのだろうか。
おまけに、初対面の面接官に「父、母」と言えず、「お父さん、お母さん」を平気で使う学生もいると聞く。身内に尊敬語の「お」を付けるのもしっくり来ない。
NHKラジオの番組で、筒井淳也・立命館大教授(社会学)が、日本人は「小家族主義」と指摘していた。他人への警戒心が背景にあるそうだ。個人主義に見える欧米人の方が同居人以外の人々とのつながりを大事にしている。今回のコロナ禍で、その傾向はさらに強くなったという。つながりが家族に限られると、両親が亡くなれば、一人になって、孤立感を深める若者もいるかもしれない。
内閣官房孤独・孤立対策担当室の人々のつながりに関する基礎調査(2022年)でも、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は4・9%、「時々ある」が15・8%、「たまにある」が19・6%だった。一方、孤独感が「ほとんどない」が 40・6%、「決してない」が18・4%となっている。 2021年と比べると、「決してない」の割合が縮小し、「時々ある」、「たまにある」、「ほとんどない」の割合が拡大した。
先進国では、孤独・孤立感を感じる人が増えているという。社会や歴史に関心を持って、家族だけでなく、地域とのつながりを深めることの大切な時代が来たのかもしれない。(時)