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未来の小窓(154) 隣百姓

 「隣百姓」(となりびゃくしょう)という言葉を聞いたことがあるだろうか。隣の家が種を蒔いたら、自分の家も種を蒔き、隣が草刈りをすれば、草刈りをするというように、隣の家をならって、物事を行うことを指す。立派に育った稲を見て、「いい出来ですね」と声をかけられると、「いえいえ、ただの隣百姓です」と返すのが礼儀らしい。
 水争いが頻発していたころがあった。貴重な水を有効に利用するため、標高の高い水田から、低い水田に田植えをしなければならなかった農民にとって、「周囲に合わせる」ということは「生活の知恵」だったかもしれない。濃密な関係から解き放たれるため、都会を目指した人も多かっただろう。
 新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられた。5類移行に伴い、治療にかかる医療費は原則自己負担となった。発症後の外出自粛やマスクの着用は個人の判断になったものの、街頭ではまだマスク姿の人が多い。
 今回のコロナ禍は、日本社会に根付く同調圧力を大きくクローズアップさせた。感染者はいじめや差別に遭い、医療従事者にも及び、自粛警察という言葉も生まれた。マスク着用が「個人の判断」に委ねられた今でも、周囲の目を気にして外せない雰囲気が残っているのだろう。
  AI(人工知能)の登場もあって、隣百姓の「前例重視」や「横並び主義」はとかく評判が悪い。将棋も囲碁もAIに勝てなくなった。生成AIのチャットGPTに至っては、たちどころに質問に答えてくれる。今まで通りに考え方をしていては、新しい産業が生まれるのは確かに難しかろう。時代に合わせ、個人の判断を重視する社会になるのはなかなかハードルが高いような気がするが、どうだろうか。(時)
 
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