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未来の小窓(132) エラスムス

 「虐待する愚か者はエラそうにムスっとしている」。保育士試験に合格した「アラフィフ」(50歳前後)の女性は、「痴愚神礼賛」で知られるエラスムスを自作の語呂合わせで覚えたそうだ。エラスムスはネーデルランド出身の哲学者。「子供といえども一個の人間」と説き、中世以来続いてきた鞭による非人間的な教育を非難したとされる。
 保育士試験は年2回行われる。筆記試験(保育原理、教育原理など8科目)と実技試験(音楽、造形、言語から2分野を選択)があり、合格率は2割ほど。それほどの難関を通りぬけたはずの保育士が驚くような蛮行を繰り返していた。静岡県裾野市の私立認可保育園「さくら保育園」の保育士だった3人が、園児の足をつかんで宙づりにするなどしたとして、暴行容疑で逮捕された事件だ。3人は30歳代。いずれも1歳児クラスを担当していた。裾野市が確認した3人の虐待行為は▽倉庫に閉じ込める▽カッターナイフを見せて脅す▽「ブス」「デブ」といった暴言を浴びせる――など多岐にわたる。園の聞き取りに対し、3人は「しつけのつもりだった」などと説明したという。
 2代目の園長は、園で知ったことを口外しないように、職員に誓約書を書かせていた。これを問題視した市は、園長を犯人隠避容疑で刑事告発している。こうした事態を知りながら、3か月間も放置した市の対応の遅さも看過できない。
 保育士は、「児童福祉法」にもとづく国家資格だ。長い間「保母」「保父」と呼ばれていたが、1999年4月の法律改正で、「保育士」になった。年齢や発達の状況に応じ、心と体の成長を助ける仕事とされる。保護者からの子育てに関する相談に応じるほか、在宅で育児をしている家庭への支援や地域での子育て支援も担っている。
 コロナ禍でエッセンシャルワーカーとされた保育士が起こした事件に、泉下のエラスムスもあきれ果てているに違いない。(時)
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