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未来の小窓(121) 善意の悪魔

 「天災は忘れた頃にやってくる」。この警句を唱えたのは物理学者の寺田寅彦だ。起きてしまった災害を忘れることなく日々の備えをしようという意味だが、ここ数年は記憶に残っているうちに、災害が押し寄せてくる感がある。
 災害のなかでも台風災害と言えば、伊勢湾台風(1959年)や室戸台風(1934年)を挙げる人が多かろう。高潮や強風による建物の倒壊などで、伊勢湾台風の死者・行方不明者は5000人を超えた。室戸台風の死者・行方不明者も約3000人にのぼったというから、被害の甚大さが分かる。今回の台風14号は鹿児島に上陸、列島を縦断した。新聞やテレビは、上陸前から「伊勢湾台風、室戸台風並み。過去に例がないほどの規模で、厳重な警戒を」と呼びかけていた。両台風に匹敵するような甚大な被害こそなかったものの、河川の氾濫や住宅地の冠水などが各地で相次いだ。どれだけインフラ整備をしても、自然の猛威にはなかなか太刀打ちといできないことが分かる。
 台風続きのなかで、インターネットのニュースを検索していて、「善意の悪魔」という言葉を知った。台風接近に備え、バス事業者が前もってバス停を倒していると、倒れたバス停を立て直す人がいるそうだ。標識の停留所のコンクリートの土台は100キロを超えるものもあり、バス事業者は「2人以上で倒しに行く」そうだが、苦労して立て直したことをツイッターに投稿したことがきっかけで、話題になっているようだ。倒したバス停に「台風の接近に伴い、当標識柱は転倒防止のため、倒しております」と「お知らせ」を付けているケースもあるそうだが、一般にはあまり知られていない。
 コロナ禍で業務に追われ、食事やトイレのままならない救急隊員がコンビニエンスストアに寄っただけで、わざわざ消防局に通報する御仁も、よく言えばその類かもしれない。善意の悪魔の当人は、なかなか気づかないことだけは確かだ。(時)
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未来の小窓(120) 相次ぐ台風

 このところ、台風のニュースが続く。先島諸島は毎週のように暴風雨に見舞われている。九州接近や直撃の台風もある。被災地の様子を伝えるテレビは、倒木や電線の切断、割れた窓ガラスなどの映像を流している。住民が食料品の買いだめに走り、スーパーマーケットの陳列棚も空っぽになっていた。
 先島諸島といっても、どこを指すかが判然しない向きもあるかもしてないが、宮古列島 ・ 八重山列島 の総称だ。中国や台湾も領有権を主張する尖閣諸島を含めることもあり、島の数は西表島など20を超える。沖縄本島よりも先にあることから、明治時代に命名された。「船便が頼り」とあって、欠航が続けば、すぐに日常生活に支障が出ることがよく分かる。
 台風が相次ぐのは、温暖化で北半球の海水温が上昇したためだという。海水が蒸発して台風のエネルギーとなる水蒸気ができやすくなっている、欧州や米国でも、猛暑や干ばつといった影響が出ている。ライン川の水位が大幅に低下し、船による石炭の輸送が滞り火力発電の出力が不安定になっている。ロシアによるウクライナ侵攻で、天然ガス供給が減らされこともあって、「脱原子力発電」に舵を切ったドイツでは、原子力発電所の稼働可能な状態を2023年4月まで維持することを決めている。冬の電力安定へ非常用の予備電源として活用するそうだ。
 経済産業省は、再生可能エネルギーによる発電比率を新たに全体の30%台後半とする方向で検討している。温暖化ガスを排出しない太陽光、風力、水素やアンモニア、バイオマスを燃料にする火力発電、といった再生可能エネルギーと原子力による発電を目指すわけだが、再稼働に慎重な世論の下で、どの程度再稼働を進めることができるかわからない。
 台風のニュースを見ていると、温暖化は待ったなしの状況になっていることだけは間違いないようだ。(時)

未来の小窓(119) 時間の感じ方

 小中学校の新学期が始まった。夏休みが終わり、ほっとしている家庭もあるかもしれない。新型コロナウィルスの感染拡大に、猛暑が続lき、慌ただしく駆け抜けたような感もある。それにしても子どものころの夏休みは、どうしてあんなに長く続くように思えたのだろう。
 1年ほど前の月刊誌をめくっていて、大人と子どもでは、時間の感覚が違うことを知った。体感時間はそれまで生きてきた年齢に反比例するそうだ。つまり、50歳の人間にとって1年の長さは人生の50分の1ほどだが、5歳の人間にとっては5分の1に相当する。19世紀のフランスの哲学者、ポール・ジャネーが発案し、甥の心理学者のペール・ジャネーの著書で紹介したもので、「ジャネーの法則」と言うらしい。「10分待って」とお願いしたのに、すぐに子どもから「まだ」と言われ、イライラした経験をした方もいるだろうが、子どもにとっては10分間が1時間ほどに思えると考えなければいけないようだ。 
 時間に対する感覚は不思議だ。楽しい時はあっという間に過ぎていくのに、退屈な時は、時計の針はなかなか進まない。年齢によって、時間の捉え方に違いがあることが、心理学の世界では100年以上も前から言われてきたことを恥かしながら初めて知った。
 そう言えば、注射の痛みの感じ方について、大人と子どもが違うことが人気のテレビ番組で紹介されていた。「注射はめちゃくちゃに痛い」という記憶が残ると、成長しても「注射嫌い」となってしまうのだろう。
 保育や教育の現場でも、大人と子どもの違いを知ることが何より大切なのかもしれない。(時)

未来の小窓(118) 共同親権

 知人夫婦が離婚したことを伝え聞いた。当然のことながら、離婚の原因については知る由もない。かといって、問いただすのにもはばかりがある。一粒種の子どもを含め、3人とも面識があったが、親権を男親の方が取ったと聞き、少しばかり驚いた。
 1990年代から増え始めたという離婚は現在、20万件前後で推移している。厚生労働省の統計によると、子どもが一人の夫婦の場合、父親が親権を獲得している割合は1割を少し上回る程度らしい。ジェンダー平等という言葉がよく聞かれるようになったが、「男は外で仕事、母親が家で子どもを育てるも」という考えが、浸透していることが背景にあるのかもしれない。親権を決める際、「これまで通り母親が子どもの面倒を見る」というケースもあるようだ。
 離婚後の親権や養育費のあり方を見直す法制審議会(法相の諮問機関)の部会が、離婚後も父母双方が親権者となる「共同親権」を選べる案を中間試案に盛り込むことを先送りした。親権がない場合は子育てに関与しにくく、親権争いが生じる原因とされる。米国など24か国を対象にした法務省調査では、単独親権のみを採用しているのは、日本のほかにインドとトルコだけだったそうだ。海外では、共同親権が一般的だ。離婚後も両親が子育てに関与できるようにすべきだとして、共同親権の導入を求める声が出ていたが、共同親権には、離婚の原因となったDV(家庭内暴力)や虐待が、継続する恐れも指摘されているという。
 離婚に至る背景にさまざまだ。100件の離婚があれば、100件の背景があるだろう。親子の実情に応じて、共同か単独かを選択できる案はしごくまっとうと思える。とりあえず導入してみて、問題点を検証していくべきではないのか。子どもは日々、成長していく。先送りしている問題とは思えない。(時)

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