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未来の小窓(113) 桜前線

 猛暑が続くなか、桜島が噴火した。各地で記録的な雨も降った。何かと慌ただしい日々に似つかわしくない話題を一つ。猛開花日を線で結んだ桜前線は、一般的に「北上する」といわれていたが、九州のサクラの開花日が最近、「北から南」になっているそうだ。森林総合研究所九州支所の季刊紙「九州の森と林業」で知った。
 季刊紙に掲載された研究報告の著者は、勝木俊雄・産学官民連携室調整監。タイトルは「気候変動による<染井吉野>の開花の異変」。報告によると、サクラの花芽は、開花前年の夏に作られるが、秋に開花しないように、いったん休眠する。冬の低温の刺激で休眠が打破され、春先の暖かさで、花芽が成長し、開花する仕組みになっているが、温暖に伴い、暖かい地方では、冬の低温刺激が十分に受けられずに成長段階に明らかな差を持つ個体が出現するようになっているそうだ。このため、福岡の方が早く開花する年も目立ってきているらしい。
 ちなみに、桜前線はメディアが作った用語で、気象庁が発表しているのは、「さくらの開花日の等期日線」。気温のデータと過去の開花日をもとにコンピューターを使って開花日を予想している。気象台の満開の定義は8割以上の開花となっているが、成長段階で差が出ると、満開のはずなのに、花が少ないという時代も来るかもしれない。
 吉田兼好は、随筆「徒然草」で、「花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは」(第137段)と述べた。満開でなくても、いろいろと見どころがあるということだろう。「花見と言えば、ソメイヨシノばかりを基準にするのはおかしい。九州地方にふさわしいサクラとして、海岸近くに生えるツクシヤマザクラはすばらしい」と話す研究者もいると聞く。ツクシヤマザクを実際に見たことがないので、どれほどきれいなのかは知らないが、過去のスタイルで思考を巡らしてはいいけない時代を迎えていることは分かる。(時)
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未来の小窓(112) 免許返納

 高齢ドライバーが重大事故を起こすたびに、免許の返納が議論になる。白線に沿って、駐車できなったり、一方通行を逆走しそうになったりすると、家族の心配も募るに違いない。「都会と違い、田舎では、車は生活に欠かせない」という反発する声もよく聞く。田舎でなくとも、返納すると、買い物や外出といった日常生活が支障が出る高齢者もいるかもしれない。返納を促すため、公共交通機関の料金割引などの特典やサービスを提供する自治体も少なくないが、ここ数年、返納件数は減っているようだ。
 警察庁によると、2021年の75歳以上の運転免許保有者は、前年より約609万8000人にのぼる。うち、80歳以上のドライバーは4割を超える。75歳以上の人が起こした死亡事故では、ハンドルの操作ミス、ブレーキとアクセルの踏み間違いが目立つという。
 返納で家族も一安心するわけだが、精神科医の和田秀樹さんの著著「老いの品格」で気になるくだりがあった。65歳以上で運転をやめた人が、6年後に要介護認定となるリスクは、運転を続けた人の約2・2倍になるそうだ。筑波大の研究チームが調査した結果だという。車で頻繁に外出していた人が運転しなくなれば、必然的に外出する機会や意欲が減り、心身の衰えも招くためだろう。
 人口減少社会を迎えているが、高齢者は増えている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2036年(令和18年)には高齢化率は33・3%。3人に1人が高齢者なので、おじいちゃん、おばあちゃんばかりがやたらに目立つ社会が間近に迫っている。高齢者とどう接していくのか。これからの社会問題かもしれない。(時)

未来の小窓(111) しはる

 安倍晋三・元首相の銃撃事件直後、目撃した女子高校生に対するNHKテレビのインタビューに批判の声が寄せられている。天下の公共放送が、ショックを受けていただろう未成年にインタビューするのはいかがなものか、高校生の顔にモザイクをかけずに放送するのかといった批判のようだが。冷静に受け答えをする女子高生が、凶悪犯の動きを、「しはる」という言葉で説明していることが気になった。
 「しはる」は敬語ではないのだろうか。インターネットで調べてみると、「しはる」は、共通語の「する」「なさる」の両方に対応して使われ、地域によって敬語になったり、ならなかったりするらしい。より敬意を示す「しなはる」「しやはる」もあるそうだ。関西圏以外の人が「なさる」に対応する言葉と考えると、違和感を覚えることになるらしい。同じようなことを思った人もいるようで、「しはる」問題は、インターネットの世界で、少しばかり盛り上がっていたようだ。
 文化庁は1995年度から毎年、敬語や慣用句などをテーマにした「国語に関する世論調査」を実施している。2019年度の調査では、3人に2人が「国語が乱れている」と回答。さらに、「どのような点で乱れていると思うか」を聞いたところ、敬語の使い方と若者言葉が6割を超えていた。
 言語感覚は人によって異なるのは当然だが、言葉によっては不快に思う世代がいる。20歳を超えた若者が目上の人に、自分の親のことを「お母さん」「お父さん」と話すのに、違和感を覚える高齢者は少なくない。身内に「お」を付けた敬語を使うのに抵抗感があるためだ。幼少時から読書体験を重ね、語彙を豊かにし、しっかりと言葉に向き合う力を身に付けたい。(時)

未来の小窓(110)コスパ

 世論調査は20世紀の初め、米国で選挙の当落を予想するために始まったとされる。その有効性を説明する際、「スープの味見」に例えられる。一さじのスープでも味が分かるように、少ないサンプルでも、国民の意見、態度を知る手がかりになるからだ。
 7月10日投開票の参院選でも、各メディアが調査結果を報道している。改選定数124(選挙区選74、比例選50)と、神奈川選挙区の非改選の欠員補充を合わせた125議席を巡り、選挙区選に367人、比例選に178人の計545人が立候補しているが、どの報道でも、「与党が過半数の勢い」らしい。そのためか、今一つ盛り上がりに欠けている印象が拭えなかったが、安倍晋三元首相の銃撃事件は起きた。選挙にどう影響するのだろうか。「政治のことは分からない」「自分の一票ぐらいで政治は変わらない」。そんな言葉を口にする学生はどう受け止めたのだろうか。
 10代の投票率をみると、投票できる年齢が18歳に引き下げられた最初の参院選(2016年)こそ、46・78%だったが、前回の19年は32・28%にとどまっている。ちなみに、年代別で最も高かったのは、両年とも60代だった。
 最近のニュースで、国政選挙の投票率と若年世代の負担について調査している東北大の吉田浩教授(加齢経済学)に研究が紹介されていた。過去40年ほどの国政選挙における「50歳以上(高齢世代)」と「49歳以下(若年世代)」の投票率や国債(国の借金)の新規発行額との関係などを分析したところ、若い世代の投票率が1%下がると、年間約7万8000円損をするという試算がでたという。
 今時の若者たちは「コスパ」をやたらに気にする。支払った費用(コスト)と、それによって得られた能力(パーフォーマンス)が低いことを「コスパが悪い」と嫌うそうだ。吉田教授の研究は、せっかくの投票権を放棄することは「コスパが悪い」ことを教えてくれる。(時)
 

未来の小窓(109) 褒める

 週に数回だが、午前7時20分ごろの路線バスで、福岡市・天神に向かう。バス停の近くに押しボタン式の横断歩道があり、そこで交通ボランティアをしている男性が、通学する小学生や当方に、「毎日、頑張っていますね」と声をかけてくれる。男性は70歳前後か。時には、親切にも押しボタンまで押してくれることもある。何とも優しい男性なのだが、「毎日、朝早くから街頭に立っているあなたの方が頑張っているのではないか」と突っ込みを入れたくなる時があるのは、生来のひねくれ者のせいだろうか、
 最近、教育現場でよく聞く言葉の一つが「褒めて伸ばす」だろう。巷にはハウツウ本も多く出回っているようだ。褒めることは、自己肯定感を上昇さ、やる気の回路を育てるというのが一般的なようだ。良い評価を受けなかった子どもの絵を、親が褒めて、玄関や居間の壁に絵を飾るのが一例かもしれない。
 スタンフォード大学の教授で、『「やればできる!」の研究』の著書で知られるキャロル・S・ドゥエック氏は、成果や才能を強調するのではなく、これまでの努力を認め、相手の立場に立って褒めることの重要性を説く。一方、金沢大教授の金間大介氏は著書「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」のなかで、横並び好きで、目立つことへの抵抗感が強い最近の若者の実像を説明。自己肯定感の低い学生にとって、褒められることも「ダメな自分に対する大きなプレッシャーにつながる」と記述している。
 日本人のメンタリティとして、目上の人や地位が上位の人を褒めることはしない。「批評する」こと自体を問題と考えるからだろう。やたらに褒める人を見て、「ゴマをする」、「茶坊主」という言葉を連想する人もいるかもしれない。褒める言葉や褒めるタイミングの難しさが分かる。(時)
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