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未来の小窓(104) 具体的に褒める

 最近のテレビで、気になっている言葉の一つが「すごい」だ。驚きがよく伝わる言葉だが、豪華な料理を見ても、見事な景色を見ても、巧みな技を見ても、アナウンサーやレポーターが連発する。女性に多いような気がするが、どうだろう。持っている語彙が少ないので、具体的に説明できないのかしれないが、何がすごいのか、分からない時もある。「卓越した」「抜群の」といった類義語は思い浮かばないのだろうか。
 福岡市私立保育士会との共催で、5月25日、子育て応援会を開催した。講師の藤田一郎・福岡女学院人間関係学部教授で、保育士ら約90人が参加した。藤田教授は九州大医学部卒。子どもの心身症や不登校児の診察に当たるかたわら、親向けの子育て講座などに力を入れている小児科医だ。この日の講演では、「しつけのために子どもを叱るのではなく、好ましい行動を褒めることで、その行動が身に付いていく」と説明した。その際、気持ちを込め、具体的に言う方が効果がある、と説いていた。「おもちゃ箱をきれいに片づけたね、おりこうさん」、「靴を脱いでそろえられたね。いい子だね」といった用例を紹介、褒められたのは、どの行動だったのかが分かるように、具体的に提示するように求めた。
 客員教授として、大学の教壇に立っているが、具体的に説明することが苦手な学生もいる。就職活動で必須となる、自己PR分を書いてもらうと、「大学時代はサークル活動に熱心に取り組みました」「活動のなかではさまざまトラブルもありましたが、大きな成果を上げることができました」といった文章をつづる学生も少なくない。どんなサークルか、どんなトラブルなのが分からないのだ。相手にきちんと伝えることが、存外に難しいことがよく分かる。
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未来の小窓(103) 背くらべ

 5月の童謡と言われて、「こいのぼり」とともに、「背くらべ」を思い浮かべる人も多いだろう。「背比べ」の作詞者は海野厚。1897年(明治30年) に静岡県で生まれた。19歳で上京し、童謡作家として売り出したが、肺結核のため、28歳の若さで亡くなっている。
 海野は7人きょうだいの長兄で、3人の妹、3人の弟がいた。とりわけ可愛がっていたのは、末っ子の弟で、年齢は17歳も離れていたという。歌い出しが「柱の傷はおととしの」となっているのは、病弱で2年間、本当に帰省がかなわず、遠く離れた地から弟たちを思う切ない気持ちが込められているそうだ。
 今年のこどもの日に合わせ、総務省が発表した15歳未満の子供の数は1465万人。前年より25万人少なく、41年連続の減少となった。全都道府県で減少していることがニュースになった。
少子化が続く今、きょうだいの平均は2人。5人に1人がひとりっ子の時代から考えると、きょうだい7人に驚く向きもあるかもしれないが、当時はそれほど珍しくなかったようだ。
 一人の女性が生涯に産む子供の推定人数を示す「合計特殊出生率」は05年に過去最低の1・26。その後、いったん上昇し、再び減少に転じた。20年は1・34だった。
 一方、国立社会保障・人口問題研究所が、夫婦にたずねた理想的な子供の数(平均理想子供数)は2・42人で、実際に持つつもりの子供の数(平均予定子供数)は、2・07人になっている。理想の子供の数を持たない理由として、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が最多だった。兄さんが弟の身長を測るような光景が見られる家庭は少なかろう。
 まったくの私事になるが、我が家は改築中だ。二人の孫の成長に合わせ、台所の柱に、身長と計測した日付けを台所の柱に記入していたが、改築の話を聞いた小学4年の孫は「柱がなくなるのか」と心配していた。毎年の計測を喜んでいたようには見えなかったが、「成長の証」として、少し楽しみにしていたのかもしれない。(時)

未来の小窓(102) 累卵

 「危うきこと累卵の如し」という故事成語がある。同様の文言は「韓非子」や「戦国策」にも登場するようだが、「史記」の故事が最も有名かもしれない。中国の戦国時代、遊説家の范雎は、秦王に向かって「秦王の園、累卵よりも危うし。臣得なば則ち安し」と言い、秦の国が卵を重ねたように極めて不安定で危うい状態と指摘した。この言で、范雎は秦の宰相に登用されている。
 「累卵の危うさ」を気にも留めなかったのは、北海道・知床半島沖で沈没した遊覧船の運航会社の社長だろう。乗員乗客26人が犠牲になった今回の惨事が起きるまで、何度も事故を起きているのに、運航体制を省みることはなかったようだ。今回の出航も、ほかの観光船の欠航の提案に応じず、「荒れたら引き返す」ことが条件で強行したという。
 社長は、安全管理に大きな責任を持つ「運航管理者」の自覚がなく、出航の中止基準も間違って説明していた。無線が壊れていたのに、修理もしなかった。代わりの通信手段は、携帯電話や他社の無線をあてにしたというからあきれる。ホテルなどの多角経営を手がけ、企業規模の拡大を目指していた社長にとって、観光船も単なるの事業の一つだったに違いない。ベテランの船長が相次いで辞めたのも、そんな社長に愛想をつかしたのかもしれない。
 杜撰としか言うほかはないが、世の中には、根拠のない楽観主義者は多い。隣りに「危うい国」があるのに。とにかく「平和」ばかり唱えているの人も、その一人かもしれない。「将来の危機」はできるだけ見ないようにして、先送りしたいのが人情だろう。
 忠言に耳を貸さず、目先の利益を優先する傾向した結果、トラブルに見舞われることはよくあるが、今回の「累卵の代償」は何とも大きすぎた。(時)

未来の小窓(101)石の上にも3年

 直木賞を受賞した山口瞳氏(1995年死去)の著書に「新入社員諸君!」がある。冒頭の12項目の心得のうち、最後の項目は「節を屈するな 男の意地をまげるな」。「だまって三年間は勤めなさい。それがエチケットというものである」 として、新入社員を入れるために、会社は多額の経費を投じており、「この金の借り」はきれいにしておく必要があると述べている。サントリーの社員として、PR雑誌の編集やコピーライターとして活躍した経験から生まれた言葉だろうが、「会社の投じた経費」を考える当世の若者は少なかろう。
 厚生労働省の調査によれば、就職後3年以内の離職率は、大卒で「32・8%」、高卒で「39・5%」(2017年3月卒)になっている。大卒では3人に1人が3年以内に離職している計算になる。日本の雇用は、年功序列、終身雇用と言われてきたが、転職サイトのCMがテレビで次々と流されるのを目にすると、転職の希望者は相当数いるのかもしれない。
 4月に入社した新入社員が出勤したくなくなるきっかけの一つは、どうやら5月の大型連休らしい。1か月が過ぎたころ、体のだるさ、無気力といった症状が出る。几帳面でまじめ、嫌と言えずに物事を引き受けてしまうといったタイプの人がかかりやすく、「五月病」と呼ばれる。正式な医学用語ではないが、新入社員だけでなく、新入学生にも起こる。医学の専門家は、連休中の寝すぎや極端な夜更かし、暴飲暴食が、五月病の防止になる、と説く。
 子どもの数が少なくなり、一人っ子の増えた影響か、「(会社で)嫌な事があったらすぐに帰っておいで」という親もいると聞く。「無理扁にげんこつ」という言葉がある相撲界でも、新弟子に同様な言葉をかける親がいるそうだが、本当だろうか。山口氏は「無意味に見える仕事も嫌がるな」「はじめの三年間は目標を立てず、一所懸命に勤めれば、必ずや何かを獲得できるはず」とも述べている。少し厳しくすると、パワハラといわれるようになっただけに、「石の上にも3年」の言葉が重い。(時)
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