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未来の小窓(88) 二枚貝の教え

 偉大な芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチは科学の分野にも造詣が深かった。山岳地帯で見つかる二枚貝の化石に着目し、旧約聖書の創世記に登場する大洪水説に疑問を呈したという。NHKの科学番組で知った。科学的な知見に基づく考えも、信仰とともに暮らしていた当時の人々を納得させることは難しかったに違いない。
 創世記によると、神の教えを守らず、堕落してしまった人々が増えたことを嘆いた神が、洪水で滅ぼしてしまうことを決意。「主と共に歩んだ正しい人」だったノアに命じ、方舟を作らせ、妻子や動物のつがいなどを乗せた。大洪水は40日間続いたとされる。レオナルドは「「激しい水流で二枚貝が流されると、貝同士をつなぐ靭帯が切れるはず。つながった状態の化石は、生きていた場所で、そのまま埋められたと考えられ、海底が隆起し、山になった証左。大洪水で山まで流されたのではない」と主張した。
 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大が続いている。ワクチン投与が切り札とされるが、懐疑的な人々も多い。科学に対する不信感、宗教上の理由などから接種が進まない国も多い。ヒトは猿から進化したという進化論を否定する信者にとって、神の教え、聖書の記述は絶対なのだろう。「神の加護があれば、感染しない」「毎日お祈りする人は救われる」と説く宗教関係者もいると聞く。「3世代先まで子供ができなくなる」「遺伝子操作している」など、根拠のない情報も、接種忌避を加速させている。
 人間の脳には、自分の意見や願望に合致する情報を集めてしまう「確証バイアス」があるそうだが、インターネットやSNSの普及もあって、きちんとした知見に接することがなかなか難しい時代になっている。新規感染者数を伝えるメディアも、不安を煽っているだけのようにも見える時がある。正しい情報を見極めることがこれまで以上に求められているのではないか。(時)


【証左】
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未来の小窓(87)聞く力

 旧陸軍で権勢をふるい、総理大臣も務めた山縣有朋は、人の話によく耳を傾ける人だった。「一介の武弁」(ただの侍上がり)が口癖で、「難しいことは知らないので教えてくれ」と言っていたそうだ。「政治家の名セリフ」(瀧澤中著)によると、表面上は「なるほど」と納得したふりをしながら、実際には正反対の行動を取った、とある。平民宰相といわれた原敬は「陰に回って執念深く反対する」と評しているという。
 「聞く力」が売りの岸田文雄首相の支持率が好調だ。菅義偉・前首相での時は、新型コロナウイルスの新規感染者が増えると、支持率が低下する傾向がみられたが、これだけ変異株「オミクロン株」の感染が拡大している中で、どの世論調査でも高支持率を維持している。これまでの安倍、菅政権が人の意見に耳を傾けない印象が強かっただけに、得をしている面もあるだろう。
 菅前首相は緊急事態宣言を巡り、追加発令を見送る政府案に対し、専門家らで作る基本的対処方針分科会で疑問が噴出。結局、政府が方針を見直し、北海道などへの宣言発令が行われた。GoToトラベル事業をめぐっては、強引に推進しようする姿勢ばかりも目立った。
 「聞く力」の効力か、岸田首相は18歳未満を対象にした10万円の給付でも給付方法の変更を容認。ワクチンの接種証明書か陰性証明書の提示で、飲食店やイベントの人数制限をなくす「ワクチン・検査パッケージ」は、当面一時停止することを原則とするものの、知事の判断でパッケージを利用することも可能との判断も示した。
 決定を覆すと、朝礼暮改と言われる首相もいれば、融通無碍と称賛される首相もいる。どこがどう違うのだろうか。人の意見を聞くことも大切は言うまでもないが、その後の実行力が問われているのは間違いない。(時)

未来の小窓(86) 寒九の水

 カレンダーを眺めていて、「寒九の水」という言葉が目に留まった。二十四節気の小寒が寒の入りとなり、立春の前日までが寒さが最も厳しくなる。小寒から9日目が「寒九」。 今年は1月5日が小寒なので、13日が「寒九」になるようだ。寒さと乾燥のために、雑菌の繁殖が抑えられるため、最も水が澄む日とされる。
 この寒い時期に仕込んだ酒が寒仕込み。他の時期の醸造したものに比べ、失敗も少なく、良質の酒になるという。新型コロナウイルスの収束が見込めないなか、「家飲み」のため、新酒を自宅に配送してもらおうと考えている人もいるかもしれない。
 コロナ禍に負けず、仕込みに汗を流している酒蔵には申し訳ないが、若者の間では「酒離れ」が進んでいるそうだ。 厚生労働省の調査によると、週に3回以上飲酒し、1日あたり1合以上飲む「飲酒習慣」のある人の割合は、99年の調査では男性で半数を超えていたが、2019年には3分の1に減っている。女性の割合はともに8%台で、ほぼ変わっていない。さらに、若年層になるほど酒を飲まない実態が浮き彫りになっている。「酔っぱらうのはカッコ悪い」「赤い顔になるのは恥ずかしい」などと思うらしい。
 識者のなかのは、「派遣社員やアルバイトなど非正規で働く若者が増えている。低所得のため、酒を飲むだけの余裕がないというのが最大の要因ではないか」と指摘する。非正規社員は同期や上司とのとながりも薄く、会社関係で飲むことも少なかろう。シフト制の職場では、仕事帰りに一緒に飲むということはなかなかないだろう。
 働き方が様変わりし、寒仕込みの日本酒のおいしさを知らないままの日本人が増えていくとすれば、何となく寂しい。(時)

未来の小窓(85) シュリンクインフレーション

 シュリンクフレーションが米国で広がっているそうだ。シュリンク(縮小)とインフレの合成語で、商品の値段は変わらないまま、サイズや量が収縮していく状態を指す。パッケージの大きさを変えない商品もあり、消費者にとっては、何とも分かりにくい値上げと言えよう。
 米国の場合、新型コロナウイルス対策で実施された金融緩和マネーが投資に向けられたうえ、原材料の高騰、人手不足、物流の停滞、半導体の調達難などが背景にある。昨年11月の米消費者物価指数は、前年同月と比べ、6・8%もアップし、市民の暮らしを直撃しているという。
  インターネットを検索すると、日本でもシュリンクインフレーションの商品が並んでいる。おなじみの商品名も目立つ。量が減っているのに、気づかないままの消費者もいるかもしれない。
  思えば、日本銀行が2%の物価上昇目標を掲げたのは2013年だった。大規模な金融緩和を行っているが、いまだに目標には到達していない。2%の目標は「適度なインフレが経済成長につながる」という理論に基づく。インフレ下で現金の価値が減少することで、貯蓄より消費や投資に回すインセンティブを生まれ、賃金のアップもつながるそうだ。   
 今回のシシュリンクインフレーションは果たして賃上げにつながるのだろうか。最低賃金を引き上げ、「官製春闘」の旗も振るう政府は、サイズや量を減らすインフレを、きちんと物価の統計に反映させてくれるのだろうか。国交省による建設工事受注動態統計のデータ書き換えが発覚したばかり。国がどこまで物価を注視、分析しているのか気になる。「一党独裁主義の国の統計はあてにならない」と笑えなくなったのが何とも情けない。(時)

未来の小窓(84) 寅年

 国立国語研究所の「日本語の大疑問」(幻冬舎新書)に、日本人の暮らしに干支が深く関わってきたことが記されている。土佐日記にも「爪のいと長くなりたるを見て、日をかぞえれば、今日は子の日なりければ切らず」とあるそうだ。十二支の干支は月日や方位を示していたが、あとから動物の名前を割り当てたため、犬や虎を使わずに、戌年、寅年というふうの書くのはそのためだという。
 寅年の2022年がスタートした。寅年の年表をみると、1914年には第一世界大戦が始まり、1950年には朝鮮戦争が勃発している。戦争と何かしらの縁があるのだろうか。
 思い返せば、子年、丑年はともに新型コロナウイルスの拡大に翻弄された一年だった。感染者が減少、明るい兆しが見え始めた矢先、新たな変異株「オミクロン株」が出現し、世界中に広がりを見せている。どこまで拡大するのか。今年も「コロナ」に振り回された年になるのだろうか。
 猛獣の虎がいないのは、東アジアの国々で日本ぐらいだが、美術の世界ではよく描かれてきた。奈良県明日香村の髙松塚古墳の壁画にも白虎を描かれている。武運長久や力を示す絵として、武将や商人たちにも好まれてきた。
 虎や寅にちなんだことわざも数多く残されている。 その一つ、「虎口を脱する」は、虎の口のように危険な場所、危険な状態からやっとのことで逃れることを指す。世界が「コロナ」の脅威という虎口を脱し、寿ぐ年になることを願わざるを得ない。(時)

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