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未来の小窓(83) 孤独の時代

 通院している皮膚科医院に、背中にクリームやローションを塗る道具のチラシがあった。3つに分かれた部品を組み立てると、孫の手にようになる。商品名は「セヌール」で、全長が約32センチ。先端は平面になっている。気軽に頼める同居人もなく、背中の所だけ治りが悪い一人暮らしの人もいることがうかがえる。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、全世帯に占める単身世帯の割合は2010年に3割を超えた。四半世紀でひとり暮らしが1100万人から2100万人に倍増しており、2040年には4割に迫るそうだ。未婚率が上昇、離婚する人も増加していることが背景にあるのだろう。パートナーとの死別で、単身世帯になったお年寄りも多い。
 かつて「標準」とされた「夫婦と子供から成る世帯」は3割を切っている。高齢男性の10人に1人,高齢女性の5人に1人が一人暮らしとなっているそうだ。
 数日前、「きょうだい(兄弟姉妹)だけの世帯で暮らす人がじわじわ増えている」という新聞記事を見かけた。65歳以上の未婚の人だけを抜き出すと、女性の8人に1人、男性も10人に1人がきょうだいで暮らしている、とあった。家族の形態が変化していることが、数字からでもわかる。
 生涯をかけ、全国を歩き回り、念仏を広めた時宗の宗祖、一遍上人(1239―1289年)は 「生ぜしもひとりなり。死するも独りなり」と説いた。人間は孤独であることを踏まえたうえで、人とのふれあいを見直してみようという意味だろう。大阪市の医院を放火し、医師や患者らを殺害した容疑者は、離婚後、孤独から息子を殺ろうとして逮捕させたことがあるという。これからの社会は「孤独対策」が一つのキーワードになるかもしれない。(時)
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未来の小窓(82)女性不況 

 「不許葷酒入山門」。禅宗寺院の門前で見かけることがある。読み方は「くんしゅ さんもんに いるを ゆるさず」。葷酒は、ニンニクのようななまぐさい匂いの野菜と酒を指す。「なまぐさい匂い」には女性の白粉も含まれるから、女人禁制の寺だ」と教えられたことがあるが、本当だろうか。
 修行の場に女性がいると妨げになるとの考え、出産・月経の血の穢れを不浄という考えから生まれたのかもしれないが、禅宗を代表する曹洞宗の開祖、道元禅師(1200~1253年)が、女性蔑視の悪習慣を否定し、男女平等を説いていたことを、NHKのラジオ番組「宗教の時間」で知った。道元禅師は「たとい7歳の女流なりとも すなわち四衆(ししゅう)の導師なり」(礼拝得髄)と説いているそうだ。「仏法を修行し、説法できる人は七歳の女子であっても導師だ」という意味だろう。
 最近、ジェンダー平等がかまびすしい。世界経済フォーラムの男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」によると、日本は156か国中、120位。「政治」「経済」の分野の低さが際だっている。女性解放運動の先駆者として知られる作家、平塚らいてうは「元始女性は太陽であった」と記述したが、道元が「女性でも導師」と強調していることを考えると、女性に対する差別は800年以上も前から続いていたことが分かる。
 今回のコロナ禍でも、たくさんの人が解雇や雇い止めにあった。若者や女性が目立ち、非正規雇用の人も少なくない。労働相談を行うNPO法人には女性からの相談が急増しているそうだ。コロナ禍の景気悪化は、女性の就業者が多い飲食業や観光業などが強く影響を受けた。このため、「女性不況」とも呼ばれ、女性の非正規雇用者が雇用の調整弁となっていたことがうかがえる。専門家は「解雇や雇止めに納得いかなければ声を上げるべき」と説く。日々の暮らしに追われる女性に、社会がどう手を差し伸べるかが問われている。(時)

未来の小窓(81) 宋襄の仁

 自国の利益ばかりを強硬に主張する国を見ながら、「宋襄の仁」という故事成語を思い出した。宋の襄公は、楚と戦っていた。兵の数が圧倒的に多く、楚軍の準備も整っていなかった。このため、部下が「敵の布陣が整う前に先制攻撃を仕かけるべきだ」と進言したが、襄公は「君子は人が困っているとき、それにつけこまないものだ」と言って、進言を却下。その後、襄公は楚に大敗してしまった。
 他者に情けをかけることは大切かもしれないが、自分勝手な国に塩を送る必要はないだろう。ノーベル平和賞を受賞した米国のオバマ大統領が、中国や北朝鮮に甘い対応した結果、中国はますます覇権主義を強め、北朝鮮は核ミサイルの開発に余念がない。
 オバマ政権で副大統領だったバイデン大統領が、議会や国内の世論に押され、来年の北京冬季五輪・パラリンピックに政府高官らを派遣しない「外交的ボイコット」を決めた。1980年のモスクワ五輪のような、選手を出場させない「全面的ボイコット」は見送った。米政府は同盟国などに同調を求めていないが、豪州やカナダ、英国は早々と追随を決めた。例によって、様子見の日本はどうするのか。
 菅前首相に比べれば、岸田首相は好感が持てる演説をしているようだが、安全運転に終始している答弁は、周囲の顔色をうかがっているように見える。失言こそないだろうが、改革の口火が切れるとは思えない。自民党総裁選で、公約に挙げていた、金融資産への課税強化はいつのまにか腰砕けになった。第二の給料と呼ばれ、1日だけの在職でも100万円が支給される文書通信交通滞在費(文通費)についても「各党で議論し、合意を得る必要がある」と及び腰だ。
 就任の記者会見では「同盟国、同志国と連携しながらしっかり言うべきことを言う」と強調していたが、各国が足並みをそろえ、包囲網の築こうとしているのに、いつまでも様子見しているようでは、将来、「岸田の仁」と言われるかもしれない。(時)

未来の小窓(80) 送料無料

 テレビをつけると、通販番組や商品のCMがやたらと目立つ。いずれも「送料無料」をうたっているが、無料で運ぶことができないことは素人でもわかる。運送関係者からは「送料無料はありえない。『なぜ、送料は当社が負担します』と言えないのか」との声も聞く。タダで運んでいると思われたらたまらないということだろう。流行りの言葉で言えば、「送料無料」はフェイクニュースと言っても良いかもしれない。
 新型コロナウイルスの感染拡大で、通販市場は活気付いている。WEBサイトでボタンをクリックしていけば、荷物がすぐに届く。多くの商品をネット上で買うことができる便利な時代になった。送料自体が手数料のような無駄なコストと考える消費者も増えているような気がする。
 運送業界はトラックや倉庫といった設備投資の負担が重い。このため、新規参入が難しいとされてきたが、近年、タクシー会社などが相次いで名乗りを上げている。「運転免許とスマホがあれば、誰でもできる仕事になった」と言う宅配会社の幹部もいるようだ。スマホで位置情報を検索すれば、だれでも配達できるということだろう。
 福岡県トラック協会長のインタビュー記事が、福岡市の情報会社の情報誌に掲載されていた。「トラックドライバーの賃金は他産業よりも約2割低く、労働時間は全産業平均よりも2割長いと言われている」としたうえで、「欧米は全産業の物流費の比率が10%弱だが、日本は5%を切っているのが実情」と訴えていた。
 確かに、送料無料と言い切ると、消費者への訴求力は強いだろうが、ほかの業界のことを思いやる気持ちはないのか。「送料無料」を強調する業者が扱う「最高級の商品」も眉唾に思えてしまう。(時)

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