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未来の小窓(66) 私権の制限

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く。10歳代の新規感染者も増えている。感染症医が足りず、専門外の医師らがやむなく治療に当たっている医療機関も少なくないと聞く。そんななか、8月24日付の読売新聞の1面の記事が目を引いた。感染症の流行に対応できる医師を増やすため、政府が大学の医学部の入学定員に感染症科や救急科の優先枠を創設する方針を決めたという。厚生労働省の有識者会議で案を示し、了承されれば、2023年度入学者から適用するそうだ。
 医学部を持つ大学は、文部科学省の管轄外となっている防衛医科大学校を加えると、全国で82校ある。定員は、医師が少ない地域に配慮した「地域枠」の888人、歯学部の定員を医学部に振り替えた「歯学部振り分け枠」の44人を含めると、9000人を超える。
  記事によると、政府の方針では、歯学部振り替え枠を廃止し、地域枠内に、感染症科、コロナ拡大で不足が顕在化した救急科、地域で幅広く病気をみる総合診療科も優先枠とするそうだが、優先枠で入学した学生が他の診療科を希望した場合、どうなるのだろうか。政府の自粛要請に応じず、深夜まで酒類の提供をする店を擁護し、路上飲みする若者らを批判せず、「感染拡大は菅政権の失政」と声高に言う人たちは、「優先枠で医師になっても、どこの科に行くのは自由。個人の進路を国が縛るのは人権侵害ではないか」とでも主張するかもしれない。
 どこまで本当かどうかは分からないが、医師一人を育てるのには、1億円以上の国の金が投入されているそうだ。しかしながら、名門医学部を卒業後、医師にならずに、外資系企業に就職する人がいる。地域枠の医師は原則、卒業後9年以上、指定された都道府県内の医療機関での勤務が義務付けられているが、在学中に受け取った奨学金などを大きな医療法人が肩代わりして返済し、自らの法人の勤務医として迎え入れる事例も耳にする。人権が大切なのは言うまでもないが、「感染の拡大状況は災害並み」というのなら、どこまで私権制限が可能なのかを考えざるを得ない時代になったのではないか。(時)
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未来の小窓(65) 記録的豪雨

 日本語には雨を表現する言葉が400個以上もあるそうだ。春に細かく降れば、小糠雨だが、秋に降ると、霧雨になる。白い雨脚の夏の夕立が白雨。音もなく蕭々と降る冬の冷たい雨が凍雨。季節ごとに、雨のわずかな違いをしっかりと感じながら、暮らしてきたことがうかがえる。
 梅雨末期を思わせるような長雨がようやくやんだ。72時間雨量が観測史上最大となっている地域も多い。新聞やテレビではしきりに「これまで経験したことのないような大雨」「数十年に一度の豪雨」と繰り返していたが、インターネットなどでは「毎年のように起きている」という疑問や、「行政の防災対策が追い付いていない」といった声も目立つ。背景に地球温暖化があるとされ、土砂災害や河川の氾濫も相次いでいる。理由はどうであれ、今までの常識では対応できない豪雨が増えていることだけは間違いないだろう。
 いろいろな気象用語のなかでも、近年、耳にするようになったのが線状降水帯だ。次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなして、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過、停滞することで作り出される。長さは50ー300キロメートル程度、幅20―50キロメートル程度になるそうだ。災害関連死を含め、計77人が犠牲になった広島豪雨(2014年8月)のころから頻繁に使われ出したという。
 温暖化に伴い、日本の平均気温も100年当たり1・24度のペースで上昇し続けている。気温が1度上がると、大気中の水蒸気量は7%増え、積乱雲が発達しやすくなるという。おなじみの入道雲は、雄大積雲とか積乱雲と呼ぶのが正式名称らしいが、夏空にむくむくと広がる入道雲を見て、線上降水帯の心配をしなければならない時代になったのかもしれない。雨の持つ情緒が失われようとしている。(時)

未来の小窓(64) 愛国心

 少国民という言葉があった。天皇陛下に仕える小さな皇国民の意味だ。戦前から戦中にかけて盛んに使われたという。少国民の男児の多くは兵隊となり、「お国のために戦う」と願った。今では想像すらできないほどの愛国心があったのだろう。
 愛国心や日の丸・君が代と言うと、目を三角にする人たちがいるが、お隣の中国の学校では、国旗の掲揚は毎週の月曜日に行い、小学・中学・高校生は国歌が歌えなければならないとされていると聞く。愛国心を育てる教育の徹底ぶりがうかがえる。かの国でいう愛国心は、中国共産党とその支配体制を愛することらしい。
 国威発揚の場となりがちな五輪がようやく終わった。菅首相は「やり抜いて良かった」と周囲に手応えを漏らしているそうだが、新型コロナウイルスの新規感染者数は連日1万人を超えている。政権への風当たりは強まるばかりだ。五輪を成功させ、9月に衆院を解散、10月の衆院選を勝利し、先送りした総裁選を無風で乗り切るという戦略も狂い始めたとされる。コロナ対策で手詰まり感があるなか、政府の頼みの綱はワクチン接種といわれる。医療従事者への接種が始まった2月以降、2回の接種を終えた人は約4000万人を超え、今月末までに国民の4割(約5000万人)が2回接種を終える目標を掲げる。
 テレビのワイドショーでは、政府や行政のコロナ対策批判が目立つ。二言目には「政府や行政が危険性を指摘してほしい」「しっかりとした説明で、国民に納得させてほしい」と訴えるが、政府はそれなりには説明しているのではないか。五輪ではしゃいでいたテレビ局や「観覧自粛」の呼びかけに応じず、沿道で臆面もなく声援を送る市民、県をまたいで帰省しようとする市民を批判しなくて良いのか。
 若い世代ほど、ワクチン接種に消極的といわれる。専門家は「副反応など将来的なリスクには敏感な世代。接種をちゅうちょするのは自然なこと」と分析するが、多少なりとも愛国心があるのなら、お国のために接種をし、行動を自粛することはできないのだろうか。愛国心に神経を尖らす人たちからは、「政府の無策が感染拡大の責任」と叱られるだろうが。(時)

未来の小窓(63) ショック・ドクトリン

 NHKのラジオ番組で、ショック・ドクトリンという言葉を知った。津波やハリケーンのような自然災害,政変といった危機で、市民の暮らしが戻る前に、利益追求の市場経済が急速に進んでいくことを指すようだ。「惨事便乗型資本主義」と訳される。
 代表的な事例の一つがインド洋に浮かぶスマトラ島のできごとだ。大地震のあとの津波で、約3万5000人が犠牲になったが、建物がなくなった沿岸部でリゾート開発が進んだ。「天災はチャンスをプレゼントしてくれた」という政府は、観光産業に力を入れるが、零細な漁民を支援するグループは、弱りきった国民に「第二の津波」が襲いかかってきた、と指摘しているそうだ。
ショック・ドクトリンでは経済格差が広がると言われる。今回のコロナ禍ではどうだろうか。「解雇・雇い止め」や「退職強要・勧奨」の相談も関係機関に寄せられていると聞く。非正規雇用だけでなく正社員からも切実な訴えがあるという。
 経済活動の停滞は経済的・社会的弱者にしわ寄せが及ぶ。アルバイト先を失い、食べることにも困る若者も増えている一方で、富裕層の所得は伸び続けている。各国中央銀行の大規模な金融緩和で流入した「投資マネー」は株価を押し上げている。米経済誌フォーブスが発表した世界長者番付(2021年版)で、米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が4年連続で首位になった。資産額10億ドル以上の億万長者は過去最多の2755人にのぼっている。
 景気の回復には、労働者の賃金アップが欠かせない。今年度の最低賃金を巡る国の審議会小委員会は激論の末、28円(全国平均)を目安に引き上げることで決着した。最低賃金の引き上げを景気回復につながるのか。経営側の言うように、人件費の上昇は倒産や廃業の引き金をひくことになるのか。感染拡大が続いてなかいるが、富の再分配をどうするのか、知恵を絞るしかないだろう。(時)
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