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未来の小窓(53) 朱印

 「丹生」の地名は、各地に残っている。ニュウ、ニウ、ニブなどと読む。大分市の丹生はニュウ。丹が産出されていたことが由来のようだ。黄金や鉄とともに貴重品とされた丹は朱とも言われ、仏教伝来後は、神社や寺院の柱や壁、橋の塗料として使われたという。万葉集にも「青丹よし奈良の都は咲く花の 匂うが如く今盛りなり」と詠われ、平城京の建物や寺社に、も朱がふんだんに使われていたことがうかがえる。
 朱には目に見えない力、霊力があると言われてきた。戦国大名や江戸時代の藩主が、武家や寺社の所領を確定させるために朱印状を出した。朱墨での訂正や印判が認められるようになったのは明治に入ってからだ。朱墨と聞くと、書道教室で、点や払いを朱色の墨を使って、指導されたことを思い出す人も多かろう。
 若い女性を中心に、寺社をお参りした際、寺社の名前や参拝した日付などが書いてもらえる「ご朱印」のブームは、まだ続いているようだ。もともと、写経を納めた証として授けられるものだったが、今では、参拝の証となっている。
ご朱印帳を手に、スタンプラリーのように回る人がいるためか、参拝せずに、ご朱印だけを授けてもらおうとして、神社側とトラブルになるケースもあるようだ。
 インターネットやSNSなどで人気になり、参拝客が急に増えたような神社では、書き手はにわか仕立てで習字を勉強するそうだが、数日間の練習で、すぐに上手な字を書けない。このため、「ご朱印の字が汚い」「下手な字で、大切にしてきたご朱印帳が台無しになった」といったクレームも少なくないと聞いた。クレームを受け、ご朱印を取りやめた神社もあるそうだ。神社側では代わりのご朱印を送るが、受け取った人は代わりのご朱印を、下手な文字で書かれたご朱印に上に貼り付けるのだろうか。
 参拝の証と考えれば、どんな文字だろうと、それが証だ。クレームを付けるのは、神様や仏様に文句を言っているような気がする。さんざん文句を言って、ご利益を授かるのはちと難しかろう。(時)

気象庁の平年値はともかく、「平均」といわれると反論しづらい数字もある。その一つが平均の年収だろう。統計の数字をみると、男性
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未来の小窓(52) 平均値

 梅雨の季節を迎えている。九州北部地方の今年の梅雨入りは15日だった。平年より20日も早い。毎年、おなじみのニュースだが、新聞やテレビは、「平年値」が19日から10年ぶりに更新されたことも伝えている。
 気温や降水量などの「平年値」は、30年間の平均値を使う。気象庁は西暦の末尾が「1」からの30年間と決めており、19日から使われる「平年値」は1991年から2020年の30年間が対象になるそうだ。降水量は夏の西日本や秋と冬の太平洋側の多くの地点で10%程度増え、降雪量は多くの地点で少なくなる。サクラの開花は、ほとんどの気象官署で1日から2日ほど早くなるようだ。ここ数年の猛暑や水害も「平年値」に反映することになるのだろう。
気象庁の平年値はともかく、「平均」といわれると反論しづらい数字もある。その一つが平均の年収だろう。統計の数字をみると、男性の平均年収は約550万円、女性の平均年収は約300万円らしい。働く女性の4分の1以上が、年収100万円台のようだが、男性が「高いのではないか」と感じる人もいるかもしれない。何千万も稼いでいる人がいるので、平均を押し上げているという。
 統計では、数値データを小さい順に並べた時、ちょうど真ん中に来る値を中央値と呼ぶが、中央値の平均は370万円程度。男性は約425万円、女性が315万円になっている。この数字の方がより実態に近いかもしれない。
 新聞の投書欄をみると、「国が発表する平均年収がおかしい」「平均貯蓄額が高すぎる」といった声を目にすることがある。「平均はあくまで平均で、どこまで実態を反映してくるかは別物」と考えることが必要だろう。台風の「上陸個数」の平年値が分かっても、今年はどうなるか分からないのだから。(時)

未来の小窓(51) さざ波

 気象にまつわる言葉の一つに有義波があるそうだ。気象台のホームページで知った。観測地点の波高の高い方から順番に、全体の3分の一の個数の波を選び、波高と周期を平均したものを有義波高、有義波周期と呼び、その波高と周期を持つ仮想的な波を有義波というようだ。実際の海の波は均一ではない。有義波高より高い波や低い波があり、人の命を奪うほどの波やさざ波もある。
 東京や大阪、福岡などに3度目の緊急事態宣言が発出されるなか、政府の高橋洋一・内閣官房参与が、「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」とツイッターに投稿、批判を受けている。東京五輪・パラリンピックの中止を求める意見に反発したもので、インドやフランスなどの感染状況と比較する画像も添付したという。
確かに、悲惨な状況になっているインドヤアメリカや欧州に比べると、日本の感染者は少ないのは間違いないが、65万人以上が感染し、死者は1万1000人を超えている。さらに、感染の拡大は続いており、暴風雨ではないものの、現状を「さざ波」程度と見るのは無理があるだろう。
 新聞の世論調査をみると、東京五輪・パラリンピックの中止を求める声は6割にのぼる。大会の開催に、直接的な関係のない聖火リレーを行うことを疑問視する人も少なくない。元財務官僚で、内閣府参事官、総務大臣補佐官などを歴任している高橋氏にとって、政府が進める方針しか眼中にないのかもしれない。
  高橋氏と言えば、東京の温泉施設で、更衣室のロッカーから、他人の高級時計や財布などを盗み、書類送検されたことを覚えている。思慮が浅かったり、力が劣ったりした人ほど、些細なことで騒ぎ立てることを、「浅瀬に徒波(あだなみ)」と慣用句があるが、盗みも「さざ波」だったのだろうか。今回のコロナ禍を「さざ波」と思っている人物に、深刻さを増す経済政策の指南を受けているとしたら、不安は拭えない。(時)

未来の小窓(50) 華族

 新聞に入っていたチラシが目に止まった。近所の医師が猫を探しており、白い大きな猫の写真が添えられていた。がっしりとした体型、長めの胴、長い毛並み。メインクーンのオスで、11歳、「大切な家族」とあった。見つけた人は「謝礼」を差し上げるとも書かれていた。インターネットでメインクーンを検索すると、賢く、遊び好きの猫とある。価格は10万から20万円程度。 血統書付きだと、30万円を超えるそうだ。
 ペットを家族と考える人が増えている。量販店のペットコーナーをのぞくと、5桁や6桁の値札が付いている。主がいないゲージには、「売却済み」ではなく、「あたらしい家族が決まりました」という札が下げられている。外出時でも、自宅で「留守番」をしているペットの様子を携帯電話で確認できる監視システムの利用者も増えていると聞く。
単身世帯が増えていることもあって、一世帯あたりの人数は減少が続いている。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、1950年代には5人近くいた世帯人数は、1961年には4人を切り、2019年には2・34人になっている。一人暮らしのお年寄りも増え続けている。
 その一方で、子どもの数は減り続けている。 総務省が「こどもの日」に合わせ、15歳未満の子どもの推計人口(4月1日現在)を発表したが、前年より19万人少ない1493万人だった。1982年から40年連続の減少で、核家族といわれていたのも遠い昔となった感がある。家庭から子どもがいなくなったこともあって、子ども代わりに、ペットを飼うようになるのだろうか。
 コロナ禍もあって、人同士との触れ合いは減っているのは間違いない。夜泣きせず、どんな時にも無条件に受け入れてくれるペットが心の拠り所になっているのかもしれないが、人との交わりを避けて、ペットだけが家族と考える人が増えているとしたら、少しばかり寂しい。(時)
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