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未来の小窓(49) 定礼公園

 福岡県福津市手光の定礼(じょうれい)公園。昭和初期、地域医療を支えた神興共立医院の跡地に整備された。この地域では、江戸時代から相互に助け合う定礼と呼ばれる制度に基づく医療が行われていた。貧富の差に応じ、玄米を納めることで、1年間無料で治療を受けられたという。
 地域の人々の命を守ってきた定礼制度は、日本の国民健康保険の下敷きになったとされる。戦前、当時の政府が詳細に調査し、国民健康保険法が成立している。公的な医療保険制度のない国では、国民負担率は低くなるものの、貧しい人が病院にかかれないといった問題も起きる。改めて、少ない負担で受診できる国民皆保険制度をの大切さが分かる。
  1年間に納められた税金や社会保険料などを個人と企業が稼いだ所得で割った数字が国民負担率というそうだ。1970年度に24・3%だった国民負担率は、近年は40%を超える水準で推移している。2000年に介護保険制度が創設されるなど社会保障が充実してきたことや、医療費のかかる高齢者の割合が高まったことなどが数字を押し上げていると聞く。
 国民負担率の問題を大学の講義で尋ねることがある。米国のように「低負担・低福祉の国が良いか」、北欧のように「高負担・高福祉の国が良いか」。毎回、後者の方がやや多いが、なかには「低負担、高福祉」と答える学生がいる。大学生にもなって、給付と負担はセットになっていることが分からないのだろうか。
 識者の多くは「日本は低負担・中福祉の国」と言っているようだ。医療や介護などの費用が多い割に負担率は低いというわけだ。一定以上の年収がある75歳以上の高齢者の医療費を引き上げることが議論になっている。負担の先送りを続ければ、社会保障制度の持続性が揺らいでしまわないだろうか。(時)


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未来の小窓(48) 心の免疫

 「新型コロナウイルスのニュースは一日2回まで。それ以上は見ないようにしよう」。雑誌のインタビュー記事で、久留米大学学長が。コロナ禍で追い詰められないための約束事として訴えていた。学長は精神科医で、統合失調症やうつ病などの精神疾患に伴う睡眠障害を研究している。危機感を煽るだけのニュースは睡眠にも悪影響を与えるということらしい。
 政府は23日、感染が拡大している東京や大阪、京都、兵庫の4都府県に、3回目の緊急事態宣言を発出する。酒類を提供する飲食店には休業を要請、大規模イベントは原則、無観客になるようだ。より感染力の強い変異型が増えており、今まで以上に、コロナのニュースを目にするようになるかもしれない。パンデミック、オーバーシュートなど、耳慣れない新たな言葉が登場してくるのだろうか。
 今回も多くのテレビ番組では「初めての緊急事態宣言時よりも国民の危機感が薄い」ことを繰り返し報じるに違いないが、番組の街頭インタビューこそ「不要不急の外出でないのか」と思う視聴者もいるだろう。東京の繁華街に繰り出す若者を撮影し、視聴者の怒りを誘うのが常套手段のテレビだが、若者にマイクを差し出す方もいかがなものか。
 医学の世界では、苦しんでいる人を見て、自分まで苦しくなってしまうことを「共感疲労」というそうだ。巨大津波を見るだけで、心が疲れてしまい、体調を崩す人もいる。「落ち着いて情報を得るなら、新聞が最適。心がリラックスしたいなら、ラジオがお勧め」という説く識者もいる。テレビから離れることが、心の免疫を得るためにも必要かもしれない。(時)

未来の小窓(47) 固定電話

 徒歩で10分ほどの出先で、スマートフォンが手元にないことに気付いた。小学生の孫が自宅に遊びに来ていたため、知人の携帯電話を借り、自宅に電話をしたが、受話器を取ってくれない。確認するため、とりあえず帰宅したが、予想通りテーブルの上に置き忘れていた。「どうして電話に出ないのか」と問いただしたが、どうやら家の電話を出る習慣がないようだ。
 若い世代は、自宅の固定電話をイエデン(家電)と呼ぶそうだが、イエデンがない家庭が増えているそうだ。総務省の情報通信白書によると、6000万件を超えていた契約数が、携帯電話に逆転されたのは2000年度。18年度は2000万件を切ったという。固定電話のない家庭に育ち、取引先や顧客からかかってくる電話にうまく応対できない若者も少なくないようだ。
 「友達との連絡はいつもLINE」「勤務先の電話はだれからの電話か分からないので、どう話して良いか分からない」。こんな若者は増えている。「固定電話恐怖症」という言葉まで生まれているほどで、対応の仕方が分からない若手社員を対象にした研修に力を入れる企業もあると聞く。
 うかつにイエデンに出ると、「おれおれ詐欺」や「アポ電強盗」の被害にあいかねない時代となった。「両親は外出中です」などと本当のことは答えていけないとされる。大学の講義もリモートが目立つようになttがあ、「対面授業よりも質問しやすい」と話す学生もいる。近い将来、パソコンやスマートフォンの画面越しにしか会話できない若者も出てくるかもしれない。(時)

未来の小窓(46) ぞうきんがけ

 総選挙の足音が聞こえてきた。政界には当選回数で就けるポストが決まる年功序列が残る。若手は、地道な地元回りや党務に汗をかく「ぞうきんがけ」が求められるようだ。選挙に強い代議士のなかには、当選回数が増える総選挙を心待ちにしているかもしれない。
 働き方改革が叫ばれていることもあってか、雑用などの「ぞうきんがけ」を嫌う新入社員が増えていると聞く。キャリアを積み上げていく国内の企業よりも、若いうちから地位や高収入を得やすい外資系企業を選ぶ若者もいるそうだ。
 今春卒業した大学生の就職内定率は2月1日現在、89・5%。前年同期を2・8ポイント下回った。同時期の内定率が前年を下回ったのは、2011年以来だという。
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、前年までの売り手市場が一転した格好だが、厳しい就職戦線を乗り越えて、入社したのに、数日間で離職する新入社員が相次いでいると、テレビのワイドショーが報じていた。入社式や研修がオンラインになって、なかなか学生気分が抜けないまま、働き始めたことも一因かもしれない。
 働き方改革の令和の時代に、「休まず働け」というのは時代錯誤だろう。若手社員を使い捨てのぞうきんのように扱うブラック企業なら、見切りをつけるに越したことはないだろうが、数日で辞めてしまうのは、いささか早すぎる感は否めない。
近い将来、財務や会計の専門業務、ドライバーなどの仕事が、AI(人工知能)に代替されると言われる。だからこそ、どんな業界でも生き抜く力を持つことが若者ほど求められているのではないか。「若い時の苦労は買ってでもしろ」という言葉もある。数日の離職は正解なのか、わがままなのだろうか。

未来の小窓(45) 6つの「あ」

 ふと思い立って、手相をインターネットで検索してみた。よく知られた生命線や感情線のほか、セレブ線、気にしすぎ線、未練タラタラ線もあった。後者の2つがあると、恋愛がなかなか成就しないのだろうか。感情線から小指に向かって上向きに伸びる縦の線が「子ども線」というらしい。右手は「生まれてくる子どもの数」、左手は「妊娠の回数」を表すという。
 「子ども線」のない人が増えているのだろうか。国内では少子化が進み、過去最少を更新している。厚生労働省が公表した人口動態統計の速報値によると、2020年に生まれた子供の数は、前年比2・9%減の87万2683人にとどまった。新型コロナウイルスウイルスの感染拡大で、出産をためらった人もいたかもしれない。急激な人口減は、経済や社会の活力の低下につながる。少子化対策は待ったなしの状況になっているのは間違いない。年間の16万件を少しでも減らすことも重要になってくる。
 福岡県宗像市で助産院を開いていた賀来はつさんの講演会に足を運んだ。主催は福岡いのちを守る会。賀来さんは「子どもは授かりもの。成長したら社会からの預かり者だから、いずれは社会にお返ししてほしい」と話していた。
 残念ながら、虐待、育児放棄、待機児童など、育児の難しさを伝えるニュースを耳にすることが多くなってきた。家族や地域ぐるみで子育てをしていたころには戻れないが、賀来さんは、自作の短歌で、子育ての心得を披露した。「子育ては 慌てず焦らず 諦めず 愛して安心 ありがとう」。6つの「あ」が子育てには大切だということを教えている。(時)
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