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未来の小窓 (197) 書を捨てよ

 アングラ演劇がブームのころ、「言葉の錬金術師」との異名もあった寺山修司の評論集「書を捨てよ 町へ出よう」が出版された。社会的な権威や知識偏重の教育に抗おうとする時代に生まれた作品だ。自身が監督・製作・脚本を務める同じ名前の映画も公開されたが、内容は別物だったようだ。
 インターネットの普及あって、紙の出版物は振るわない。ネット書店の伸長で、書物も宅配で取り寄せる時代になった。近くの書店がなくなり、困っている人も多かろう。棚に並んだ背表紙を見ているだけでも心が豊かになるような気がするのだが、書店が減って、書を捨てざるを得ない状況になっているかもしれない。
 日本出版インフラセンターによると、2013年に全国1万5602店あった書店の総店舗数は、22年に1万1495店に減った。全国の市区町村のうち、地域に書店が一つもない無書店自治体はおよそ4分の1にのぼるという調査結果もある。1年間、全く本や雑誌を手に取らない大学生もいると聞く。
 事態を憂慮した経済産業省は大臣直属の「書店振興プロジェクトチーム」を設置した。映画や音楽、文芸などを扱うコンテンツ産業課に事務局を置き、事業内容の議論や調査を進めるそうだ。 官の旗振りで、書店が増えるのか。本好きな若者が増えるのだろうか。
 チャットGPTなどの生成AI(人工知能)が登場。平気でAIの回答を丸写ししたリポートを提出する学生も増えている。全国大学生活協同組合連合会の調査で、大学生の2人に1人が使った経験を持つことが新聞で報じられていた。「本を読まない」層は、確実に増えていくに違いない。(時)

未来の小窓(196) 同じ話

結婚式の挨拶と言えば、冗長で面白くないものと相場が決まっているようだ。いずれにしろ、短ければ短いほど喜ばれるのは言うまでもない。上り坂、下り坂、まさかの「三つの坂」、堪忍袋、巾着袋(給料袋)、お袋の「三つの袋」は、おなじみのフレーズかもしれない。三つの袋は、タレントの徳川夢声が1960年に言い始めたことがきっかけという説もあるそうだ。地位のある高齢者がよく使う印象があるが、て、聞かされる方は「またか」と思うに違いない。「雨降って地固まる」や「結婚生活はお互いへの思いやりと忍耐が大切」といった常套句も、聞き飽きた人もいるかもしれない。
自民党の派閥の政治資金規正法違反事件を受けた衆院政治倫理審査会が開かれた。自らの申し出で出席した岸田文雄首相は規正法の改正による罰則強化の意向を表明、事件に関係した議員らの処分も検討する方針を示したものの、裏金作りが始まった経緯など新事実はなかった。テレビ中継を見ていて、「いつもの同じ話」と思った人も多かっただろう。
「検討する」という言葉が大好きで、「検討し」と揶揄されている岸田首相は、「対応」「前向き」などを多用する。何か指摘されると、激高することもあった安倍晋三前首相と比べると、同じ話を忍耐強く、繰り返すことができるのは能力かもしれない。自民党や内閣の支持率がいくら低くなっても意に介さない「鈍感力」も相当だ。
残念ながら、野党も新たな追及材料もないようだ。新味のない話を繰り返しても、政治倫理審査会が実りのあるものにはならないだろう。政治不信は強まりばかり。このままでは国民の理解は得られないのは言うまでもない。(時)

未来の小窓(195) キャッシュレス

 オープンしたばかりの大阪市内の大型ホテルに宿泊した。櫛や髭剃りなどのアメニティグッズはフロントまでは取りに行くことには驚かなかったが、部屋ごとの電話はなく、フロアに一つだけになっていた。なんでもスマートフォンで済ます時代になり、利用頻度を勘案したのだろう。
 ホテルの案内は英語表記で、宿泊客も外国人が目立った。レストランの支払いは、出発日にフロントで清算する「部屋付け」か、クレジットカード、電子マネーや交通系ICカードは使うシステムで、現金は使えなかった。アジアではキャッシュレス化が進んでいる。日本の現金決済の割合は8割を超えているが、韓国ではすべての決済手段のうち、現金決済が14%であるという調査結果もある。「現金ノー」のレストランは違和感があるが、これも時代の流れだろう。
 円安も手伝って、日本を訪れる外国人が増えている。日本政府観光局(JNTO)の推計によると、2023年の訪日外国人は2500万人を超え、コロナ禍前の2019年に比べ、8割程度まで回復した。今年1月の訪日外国人客数(推計値)は、268万8100人。元日の能登半島地震の影響で、東アジアなど一部から訪日をキャンセルする動きがあったものの、コロナ禍前の2019年1月と比べ、ほぼ横ばいだったという。国・地域別では、韓国が85万7000人と最多だった。 
 グローバル化に伴い、「世界の動き」を無視することはできない。日本を訪れる外国人はこれからも増えるだろう。デジタル通信機器、ネットワークへのアクセス、キャッシュレス社会になじめない高齢者や地域も少なくない。どう向き合っていけば良いのかが、問われているのかしれない。(時)

未来の小窓(194) タクシーアプリ

 都市ホテルの玄関と言えば、ハイヤーやタクシーが列をなしていることが多いが、福岡市内の有名ホテルの入り口には、「自身でのご予約、タクシーアプリの活用」を求める看板が掲示されていた。「現在、タクシーの供給が不足しており、待機車両不在の状況が続いています」との説明も添えていた。
 どの業界でも人手不足は深刻になっている。タクシー業界も例外ではない。タクシー運転手は高齢化を背景に減少が続いている。2021年度までの2年間でおよそ4万人減ったという。今年4月以降は、運転手の時間外労働の上限が年960時間に制限される。より賃金が高い仕事を求めて、転職していった人もいるかもしれない。
 各社とも労働環境を改善し、担い手を増やそうとしている。国も業界の規制緩和に乗り出しており、助手席の「運転者証」に義務付けられていた氏名と顔写真の掲載をなくした。プライバシーを保護して安心して働ける職場環境を作るのが狙いで、女性の運転手を少しでも増やそうという試みだ。おおむね30万人以上の都市に限られていた個人タクシーをどの地域でもできるようにした。過疎地では、高齢者が買い物や病院などへの行き来に使われることが多いことに配慮した。個人タクシーの運転手の年齢制限を原則75歳から80歳までに引き上げる方針という。
 一般ドライバーが自家用車を使って有料で客を運ぶ「ライドシェア」アプリ専用車のサービスの実験も始まっている。客がアプリで来て欲しい場所と行き先を入力すると、迎えに来てくれる。乗客の予約通知は最も近くを走るタクシーに届くのだが、すぐに返信しないと通知は別のタクシーに行ってしまうというから、反応が遅れた運転手は仕事を取られてしまう。
 人手不足の結果とはいえ、乗客も運転手もいよいよ「気の抜けない」時代になっている。(時)

未来の小窓(193) 本来の古典落語

 お笑い芸人の影響だろうか。「おおきに」や「あかん」などの関西弁がテレビで広がっている。このため、東京の寄席で披露されることが多い「金明竹(きんめいちく)」が演じにくくなったという。骨董屋を訪れた取引先の男が、関西弁で言い立てるところが聞かせどころで、応対した小僧が、男の言葉に戸惑う様子が笑いを生む。言葉の内容が分かると困るわけで、名古屋弁や博多弁の男にしてしまう落語家もいると聞く。
 青森に親類がいるという落語家、立川談笑は、訪問した男が津軽弁で話す設定にしているが、「『本来の古典落語とは違うけど面白かった』というファンの声に当惑している。NHKのラジオ番組で明かしていた。
そもそも落語にはいわゆる台本がない。演者が自由に手を加えることで、今日まで続いていた。一人ひとりがプロデューサーであり、くすぐり、落ちも違うのが当り前だ。インターネットを検索して、「本当の古典落語」を求めるのだろうか。若者と議論しようと思っても、すぐに正解にたどりつこうとする。こんな風潮が背景にあるのかもしれない。
 社会の価値観や使われる言葉も少しずつ変化していく。文化庁の「国語に関する世論調査」によると、「情けは人のためならず 」という諺も「人に情けをかけておくと、巡り巡って結局は自分のためになる」がというのが本来の意味とされてきたが、「情けをかけて 助けることは、結局はその人のためにならない」を選択する人が増えている。「雨が降りそうな様子」を表す雨模様も、本来の「雨が降りそうな様子」よりも「小雨が降ったりやんだりしている様子」と考える人が増えている。
 社会がより複雑になった時代だからこそ、「本来」はないという価値観があることを知っておくことが求められているのかもしれない。(時)
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