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未来の小窓(157) 送料無料

 いつのころからだろうか。テレビで通販番組が占有するようになったのは。とりわけ、早朝や深夜はやたらと目立つ。通販は「ショッピング」と言い換え、「ここでしか買えません」「今なら半額です」などと声高に訴える。放映料金やタレントの出演料を考えると、「赤字になってしまう」と訴える「社長」の言葉は嘘としか思えない。随分と利幅の大きい商売に違いない。
 「送料無料」「オペレーターを増やしています」と言われ、衝動買いした人も多かろう。日本経済新聞(6月3日付け)が、政府が通販会社に「送料無料」の変更を求めることを報じていた。少し考えれば分かることだが、送料無料は虚偽表示だ。ただで運んでくれる運送業者はいない。販売価格の一部で充当しているのに、どうして「送料無料」というのか。
 運送業界は大変な人手不足に悩まされている。ドライバーの高齢化も指摘されている。トラック運転手に時間外労働の上限規制が24年4月から適用されるため、運転手が働ける時間が短くなる。「2024年問題」と言われ、荷物の輸送能力が急低下する恐れがある。宅配だけでなく、製造から小売りを結ぶ物流網の維持も危ぶまれている。暮らしや経済への影響は計り知れない。「30年には全国の約35%の荷物が運べなくなる」という試算を公表した研究機関もある。
 新聞と違い、国民の財産である貴重な電波を使用していることから、テレビは総務省の監督下にある。放送法でも「事実を曲げないで報道すること」が求められている。BPO(放送倫理・番組向上機構)はせめて「送料は当社で負担します」と指導すべきではないのか。(時)
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未来の小窓(156) 放置山林

 山村では人口が減少する一方、田舎では放置される山林が増えている。境界線も分からなくなって、相続することもできないという山林も少なくない。荒れた森では、倒木が道路をふさいだり、土砂崩れを起きたりする。その後始末をどうするのかも問題になるようだ。
 47都道府県のうち、山林が占める割合が大分県が最も大きいと聞いた。放置山林の面積も日本一らしい。先日、県北部の国東市の山村を訪れた。伐採費用がなかなか捻出できず、鎮守の森を含めた山林がそのままになっているという。山村の所有者らから「伐採後、サクラを植えたらどうか」「整備し、キャンプ場にできないか」といったアイデアも挙がったが、「このままでも良い」という人もいた。「何もしないで10年先、20年先はどうするつもりか」と尋ねると、「家を継ぐ人もいないので、先のことを考えても仕方がない」と話していた。
 相続を希望しない土地を国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」が始まった。相続する資産のうち、山林だけを放棄することが可能になるが、建物があったり、境界線が明確でなかったりする土地は引き取らないという。隣接地と争いがないこと、敷地内に急勾配・崖の地形を含まないといった条件もあるそうだ。
 国東で出会った山林の所有者の多くは70歳代だろう。都会に出ていった子供は都会で根をおろし、孫たちの故郷は国東とはならない。所有者はいずれも矍鑠としていたが、10年後には80歳代、20年後には、90歳代になる。地域で「負動産」をいつまで守ることができるのだろうか。(時)

未来の小窓(155) 100年時代

 戦国時代の1560年、織田信長は桶狭間の戦いで、今川義元に勝利した。ドラマや小説にもたびたび取り上げられている。敵の本陣に切り込むシーンより、戦いの前に信長が舞う幸若舞の方が印象に残る。「人間五十年、化天の内を比ぶれば、夢幻のごとくなり」の一節はあまりにも有名だろう。「人間五十年」は「にんげん」ではなく、「じんかん」と読み、人の世の50年の歳月も、化天に比べると、夢幻のように短いものという意味で、「寿命が50年」ということではないが、信長は享年49で、命を落としている。
 新生児の死亡者の減少や医療体制の充実などで、日本は世界屈指の長寿国となった。厚生労働省によると、2021年の日本人の平均寿命は男性が81・47歳、女性が87・57歳。新型コロナウイルス感染による死亡者の増加もあって、男性が前年より0・09歳、女性が0・14歳短くなったが、戦後まもなくのころに比べ、大きく伸びたことは間違いない。「人生100年時代」という言葉もよく耳にするようになった。
 先日の新聞記事で、100歳以上まで長生きしたいと望む人は約2割にとどまるとの調査結果が目に留まった。調査したのは、公益財団法人「日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団」(大阪市)。希望しない理由(複数回答)は「家族やまわりの人に迷惑をかけたくない」が59%と最も多く、「体がだんだんつらくなると思う」(48・2%)、「経済的な不安がある」(36・7%)が続いたという。
 国内の百寿者(100歳以上)の人口は増えており、9万人を超える。健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる健康寿命と平均寿命との差が広がれば、医療費や介護費の増加も懸念される。長生きがリスクになる時代になってはいけない。(時)

未来の小窓(154) 隣百姓

 「隣百姓」(となりびゃくしょう)という言葉を聞いたことがあるだろうか。隣の家が種を蒔いたら、自分の家も種を蒔き、隣が草刈りをすれば、草刈りをするというように、隣の家をならって、物事を行うことを指す。立派に育った稲を見て、「いい出来ですね」と声をかけられると、「いえいえ、ただの隣百姓です」と返すのが礼儀らしい。
 水争いが頻発していたころがあった。貴重な水を有効に利用するため、標高の高い水田から、低い水田に田植えをしなければならなかった農民にとって、「周囲に合わせる」ということは「生活の知恵」だったかもしれない。濃密な関係から解き放たれるため、都会を目指した人も多かっただろう。
 新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられた。5類移行に伴い、治療にかかる医療費は原則自己負担となった。発症後の外出自粛やマスクの着用は個人の判断になったものの、街頭ではまだマスク姿の人が多い。
 今回のコロナ禍は、日本社会に根付く同調圧力を大きくクローズアップさせた。感染者はいじめや差別に遭い、医療従事者にも及び、自粛警察という言葉も生まれた。マスク着用が「個人の判断」に委ねられた今でも、周囲の目を気にして外せない雰囲気が残っているのだろう。
  AI(人工知能)の登場もあって、隣百姓の「前例重視」や「横並び主義」はとかく評判が悪い。将棋も囲碁もAIに勝てなくなった。生成AIのチャットGPTに至っては、たちどころに質問に答えてくれる。今まで通りに考え方をしていては、新しい産業が生まれるのは確かに難しかろう。時代に合わせ、個人の判断を重視する社会になるのはなかなかハードルが高いような気がするが、どうだろうか。(時)
 

未来の小窓(153) 保育士募集

 10年ほど前になる。保育士を養成する学科を持つ短期大学で、掲示された「保育士募集」の求人の多さに驚いたことがある。保育士不足に悩む保育施設が少なくないことを裏付けている。保育士は長時間労働や低賃金が指摘されていることもあって、学生にとって、「売り手市場」の状況は、今も変わっていないようだ。
 文部科学省の学校基本調査によると、幼稚園は最多だった1985年度の約6割まで減少した。一方、保育園は増え続けている。共働き世帯の増加で、子どもを預かってくれる時間の長い保育所を希望する家庭が多くなったことが背景にあるのは言うまでもない。「保育園落ちた日本死ね」という匿名ブログが話題になったのは2016年だったが、その後、待機児童は減り続けている。昨年春にはピーク時の9分の1まで減ったそうだ。2020年の国勢調査では、保育園児が幼稚園児の倍以上になっている。
 「こどもの日」に合わせ、総務省が発表した15歳未満の子どもの推計人口(4月1日現在)は1435万人。新型コロナウイルスの感染拡大による婚姻数の減少や出産控えが影響したとみられる。子どもが総人口(1億2519万人)に占める割合は11・7%で、米国や英国、フランスが低くなっている。
 出生数は減り続けており、今後も人口減が続く。大学は18年後だが、幼稚園や保育園は数年で影響が出てくる。これまでのシステムや常識を覆して、子どもや高齢者を一緒に預かれるような施設を整備することが必要になる時代がくるのかもしれない。(時)
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